判旨
購入斡旋の依頼を引き受けた者が、代金や飼育料等の交付を受けたとしても、直ちに特定の引渡債務を負担するとは限らず、斡旋のために相当の努力をしていれば債務不履行責任は負わない。
問題の所在(論点)
購入斡旋の依頼を引き受けた者が、代金や費用等の交付を受けた場合に、単なる「努力」を超えて「目的物の引渡し」そのものを内容とする債務を負担したといえるか。また、斡旋が不調に終わった場合に直ちに債務不履行責任を負うか。
規範
「斡旋」を目的とする契約上の債務は、特段の事情がない限り、特定の目的物を取得・引渡すべき結果債務ではなく、その目的が達成されるよう誠実に尽力すべき手段債務である。したがって、受託者が目的達成のために相当な努力を尽くしたと認められる場合には、仮に結果として目的が達成されなくとも、債務不履行(民法415条)には当たらない。
重要事実
上告人は、被上告人の支部に対し、緬羊5頭の購入斡旋を依頼した。その際、上告人は被上告人に対し、購入代金のほかに引渡までの間の飼育料および運搬費を交付した。被上告人の担当者は種々斡旋に努めたが、意のように捗らず日時が経過したため、上告人は債務不履行を理由に契約の解除と損害賠償を請求した。
あてはめ
本件における斡旋契約の内容は、上告人が他から緬羊を買い受けその引渡を受けられるよう努力する趣旨のものと解するのが相当である。代金や飼育料の交付があった事実のみをもって、直ちに「引渡債務」までを負担したとは認められない。また、被上告人の担当者は斡旋のために相当の努力をしており、不誠実であったとは認められない以上、意のように捗らず日時を経過したとしても、債務不履行があったとはいえない。
結論
被上告人に債務不履行はなく、上告人の解除および損害賠償請求は認められない。
実務上の射程
準委任契約(事務処理の委託)における手段債務性を確認する事案として活用できる。結果が発生しなかったことのみをもって直ちに不履行とするのではなく、債務の内容が「結果の実現」か「最善の努力」かを契約の性質や対価の趣旨から画定する際の判断指針となる。
事件番号: 昭和36(オ)269 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】和解条項の履行につき信義則上の義務に違背するか否かの判断において、和解成立に至るまでの事情を斟酌することは正当である。和解成立の経緯は、履行の際に要求される信義則上の誠実義務の程度を左右する重要な判断要素となる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で和解契約が成立したが、その後、被上告人が本…