判旨
選挙権を有しない者の無効投票が当選の効力に影響を及ぼすかは、当選者各人の得票数から当該無効投票数を差し引き、なお次点者の得票数を上回るか否かによって判断すべきである。また、無効投票を理由に当選の無効を主張する訴訟は、選挙全体の無効を争う選挙訴訟ではなく、特定の者の当選の効力を争う当選訴訟に該当する。
問題の所在(論点)
1.選挙権を有しない者の無効投票がある場合、当選の有効・無効を判断するための計算方法(当選への影響の有無の判定基準)は如何にあるべきか。2.無効投票を理由とする当選無効の訴えは、選挙訴訟と当選訴訟のいずれの性質を有するか。
規範
1.無効投票が存在する場合、その投票は特定の誰かになされた可能性を否定できないため、当選者一人ひとりについて、当該無効投票のすべてがその者に投じられたと仮定して得票数から差し引く。その残余の得票数が、最高位落選者(次点者)の得票数と同数またはそれ以下となる場合には、当選の結果に影響を及ぼしたものと判断する。2.無効投票による当選の無効を主張する訴訟の性質は、選挙訴訟ではなく当選訴訟として扱うべきである。
重要事実
議会議員選挙において、選挙権を有しない者による無効投票が5票存在した。当選人である上告人らに対し、この無効投票が当選の効力に影響するとして争われた。原審は、この5票を上告人ら各人の得票数から差し引いた場合、いずれも次点者の得票数(87票)を下回ることになるとして、上告人らの当選を無効と判断した。上告人は、無効投票は全候補者から一律に差し引くべきであると主張し、また訴訟の性質についても争った。
あてはめ
1.無効投票が誰に投ぜられたかは不明であるが、その可能性は各候補者のいずれか一人について生じるものであり、全候補者に同時に生じるものではない。したがって、個々の当選者ごとに「もしその無効投票がすべて自分に投じられていたならば」という仮定に基づき、得票数から無効投票総数を差し引くべきである。2.本件では、上告人ら両名の各得票数から5票を差し引くと、次点者の87票より少なくなった。この場合、無効投票によって当選の結果が左右された(影響を受けた)といえるため、当選を無効とした原審の判断は合理的である。
結論
無効投票数を差し引いた結果が次点者の得票数以下となる場合、当選は無効となる。また、本件訴訟は当選訴訟として取り扱うべきである。
事件番号: 昭和27(オ)189 / 裁判年月日: 昭和28年2月10日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】潜在的無効投票がある場合、公職選挙法209条の2の規定に基づき、各候補者の得票数から当該無効投票数を各候補者の得票数に応じて按分して差し引くべきである。改正法の附則により、このルールは施行時に現に係属している訴訟にも適用される。 第1 事案の概要:昭和26年4月の青森県西津軽郡議員選挙において、1…
実務上の射程
公職選挙法(当時の地方自治法等の準用を含む)における当選無効の判断基準を示す重要な射程を持つ。答案上は、投票の有効性に疑義がある場合の「当選に影響を及ぼすおそれ」(公選法205条1項参照)の具体的判断枠組みとして、この「差し引き計算」の論理を援用できる。また、選挙訴訟(公選法204条)と当選訴訟(同208条)の区別が問われる場面での判断基準としても機能する。
事件番号: 昭和31(オ)734 / 裁判年月日: 昭和31年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の自書式投票において、候補者の氏名の一部に誤記がある場合であっても、全候補者の氏名との照合により特定の候補者に対する投票の意思が客観的に認められるときは、当該投票は有効である。 第1 事案の概要:本件選挙において、ある投票用紙に記載された氏名の「氏」は「D」であり、「名」の二字のうち一…
事件番号: 昭和23(オ)31 / 裁判年月日: 昭和23年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙における違反行為が認められる場合であっても、それが著しく選挙の公正を害し、または選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合でない限り、当選または選挙は無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、当選人である原正則が「書記」の地位にあったとして、その被選挙権の欠如や選挙の無効を主張した。しかし…
事件番号: 昭和23(オ)34 / 裁判年月日: 昭和26年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴状に委員長の名前が併記されていても、訴状全般の内容から選挙管理委員会を被告とする意図が明白であり、当事者双方がそれに応じて訴訟を遂行した場合は、委員会を被告と解して差し支えない。また、投票の有効性は、文字の不鮮明さや他候補者の存在を総合考慮し、通常人が判読し得ないものは無効と判断される。 第1 …
事件番号: 昭和24(オ)321 / 裁判年月日: 昭和25年9月8日 / 結論: その他
一 権限のない者によつて選任せられた投票立会人の立会について、投票管理者が異義を述べなかつたからといつて、右の投票立会人が投票立会人としての資格を具有するに至るものと解することはできない。 二 ある村の選挙を全部無効とし改めて適法な手続によつて選挙をやりなおすにおいては、その村の属する選挙区における候補者の当落に異動を…