判旨
賃借人が罹災者を一時的に入寮させた事実は、事実上の使用許容に過ぎず、賃貸借や使用貸借といった法律上の占有権原の設定を意味しないため、当該罹災者は賃貸人に対して占有の正当性を対抗できない。
問題の所在(論点)
賃借人の許可を得て建物内に滞在する罹災者の占有が、賃貸借や使用貸借等の法律上の占有権原に基づくものといえるか、それとも単なる事実上の使用許容にすぎないか。
規範
建物等の使用が認められている場合であっても、それが特定の目的(罹災者の救済等)のために一時的な便宜として事実上許容されたものにとどまる場合には、賃貸借や使用貸借といった当事者間に法律上の権利義務を発生させる契約関係の成立は認められない。
重要事実
賃借人である訴外団体(D E支部)は、被上告人から事務所用として建物を賃借したが、事務所を他へ移転した後も当該建物を会合場所や罹災組合員の一時収容施設(寮)として継続利用していた。上告人らは戦災に遭い、同支部の許可を得て同建物に避難・収容された者であったが、後に賃貸人から退去を求められた際、転貸借等の占有権原があると主張して争った。
あてはめ
本件では、賃借人である団体が自ら建物を管理・使用する傍ら、戦災という非常事態に際して罹災した上告人らを「一時的に収容」していたに過ぎない。このような入寮の経緯や目的(避難・一時収容)に照らせば、当事者間に賃貸借や使用貸借といった法律上の権利関係を設定する意思があったとは認められず、単に事実上その使用を一時的に許容したものと評価される。
結論
上告人らの占有は法律上の権原に基づくものではなく、単なる事実上の使用許容に過ぎないため、賃貸人(被上告人)に対して占有権原を対抗することはできず、建物の明け渡しを拒めない。
実務上の射程
建物の占有者が「賃借人から許可を得ている」と主張する場合、その実態が法律上の契約(転貸借や使用貸借)か、単なる好意・恩恵による事実上の使用許容(いわゆる「宿借」的状態)かを区別する際の考慮要素として、入居の経緯や一時性の有無が重要となることを示唆している。
事件番号: 昭和23(オ)153 / 裁判年月日: 昭和24年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約において、賃貸人が一方的に賃貸や賃料受領の意思を失ったとしても、それだけで賃借権は消滅しない。また、賃貸人の承諾を得て第三者を居住させている場合、賃借人自身が直接占有していなくとも賃借権に基づく占有(間接占有)は継続し、賃貸借関係は存続する。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)は、賃借人…