判旨
金銭債務において、債務者が当初予想していた資金調達が法令の制限等により不可能となり、履行期に支払いができなかったとしても、債務者の責めに帰すべき事由がないとはいえない。
問題の所在(論点)
金銭債務の履行に関して、統制法規による資金調達の困難等の事情が、債務者の責めに帰すべからざる事由(不可抗力)に該当し、債務不履行責任を免れる理由となるか。
規範
金銭債務の履行遅滞または履行不能において、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。資金調達に関する経済的事情や法令上の制限は、特段の事情がない限り債務者の内部的事情にすぎず、これによる支払不能は債務者の帰責事由を否定する根拠とはならない。
重要事実
買主(上告人)は、売買契約締結時、自己の資金状況や臨時資金調整法等の統制法規、許可手続に要する日数等を考慮した上で、履行期までに代金残額を支払えると予想し、履行期を確定的に約定した。しかし、買主の予想に反して資金調達が困難となり、約定の期日に代金を支払うことができなかったため、債務者の責めに帰すべからざる事由による履行不能(または不可抗力による遅滞)を主張した。
あてはめ
買主は契約締結にあたり、金融情勢や関連法規を考慮した上で履行期を自ら予見し確定させている。したがって、仮に買主の予想に反して資金支払が不能になったとしても、それは買主が負うべきリスクの範囲内であり、債務者の責めに帰すべからざる事由によって履行不能となったものということはできない。
結論
金銭債務の履行不能は原則として認められず、資金調達の失敗は債務者の帰責事由を免れさせないため、買主の主張は棄却される。
実務上の射程
民法419条3項の「金銭債務については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない」という原則を裏付ける。答案上は、金銭債務における履行不能の不成立や、経済的事情を理由とする帰責事由の否定が認められないことの根拠として使用する。ただし、本判決は昭和27年のものであり、現行法下でも金銭債務の特則として確立した法理である。
事件番号: 昭和28(オ)1315 / 裁判年月日: 昭和30年9月9日 / 結論: 棄却
売買契約の締結につき、売主に自己の商号の使用を許諾した者は、右売主が売買の合意解除に際し買主に対し手附金を返還することを約した場合、右手附金返還債務につき商法第二三条の規定による責任を免れない。