不動産の譲渡後登記義務の履行期前に、同不動産につき第三者から処分禁止の仮処分をうけたからといつて、右移転登記義務が履行不能になつたものということはできない。
不動産の譲渡後登記前に同不動産につき処分禁止の仮処分があつたときは、譲渡人の登記義務は履行不能となるか
民法177条,民法415条,民訴法758条
判旨
不動産の処分禁止の仮処分命令がなされその登記がされた場合であっても、債務者の所有権移転登記義務が履行不能になるわけではない。
問題の所在(論点)
不動産に対する処分禁止の仮処分命令およびその登記がなされたことにより、売主の所有権移転登記義務が民法上の「履行不能」に該当するか。
規範
債務者所有の不動産につき処分禁止の仮処分命令が発せられた場合、債務者は当該不動産の処分をなし得ないものではなく、その処分が仮処分に抵触する範囲において、仮処分債権者に対抗できないにすぎない。したがって、仮処分登記の存在のみをもって、売主の所有権移転登記義務が履行不能(債務不履行)に陥るものではないと解する。
重要事実
買主である被上告人は、売主である上告人らの先代との間で不動産の売買契約を締結し、残代金の支払いと引き換えに登記の履行を求めた。しかし、売主側はこれに応じず、契約は被上告人による催告および解除の意思表示によって解除された。これに対し、上告人らは、契約締結後に第三者から当該不動産について処分禁止の仮処分命令を受け、その登記がなされていたため、登記移転義務は帰責事由のない履行不能に陥っており、違約の責任を負わないと主張した。
あてはめ
本件において、上告人ら先代は第三者から処分禁止の仮処分命令を受け、その登記も経由されていた。しかし、仮処分の効力は、処分行為そのものを絶対的に禁じるものではなく、仮処分債権者との関係で相対的に無効とされるにとどまる。そのため、売主が買主に対して登記を移転すること自体は法的に禁止されたわけではなく、履行不能には当たらない。したがって、正当な理由なく登記移転を拒絶し、被上告人の催告に応じなかった売主側には債務不履行(違約)の責任が認められる。
結論
処分禁止の仮処分登記があっても登記義務は履行不能とならないため、売主側の違約に基づく本件契約の解除は適法である。
実務上の射程
二重譲渡や第三者による妨害がある場面での「履行不能」の判断基準として重要である。仮処分はあくまで相対的効力しか持たないため、直ちに履行不能として債務を免れる理由にはならないという構成は、現在でも実務上確立した法理である。答案上は、履行不能の成否を論ずる際の反論への再反論として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)508 / 裁判年月日: 昭和31年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の解除に伴う損害賠償について、民法上の解除としての効力が認められない場合であっても、当事者間で損害金支払に関する合意が成立している場合には、当該合意に基づき履行を請求することが認められる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間の不動産売買契約に関し、被上告人は当初、民法上の規定に基づく契…