違約手附金の約定が契約関係を清算する趣旨のものである場合は、右違約手形附金を交付した者が相手方の違約を理由として手附金倍戻を請求するためには、あらかじめ契約解除の手続を経ることを要しない。
違約手附金倍戻の請求と契約解除の要否。
民法420条,民法541条,民法557条
判旨
売買契約において違約手附の特約がある場合、民法557条の規定にかかわらず、債務不履行があれば契約解除を待たずに損害賠償額の予定としての手附倍戻請求が可能である。また、手附倍戻による実質的な負担額が売買代金の8分の3程度であれば、公序良俗に反し無効とはならない。
問題の所在(論点)
1. 民法557条がある場合に違約手附の特約は有効か。 2. 違約手附に基づく請求に際し、契約の解除が必要か。 3. 手附倍戻の特約が公序良俗に反し無効となるか。
規範
1. 売買契約の当事者が特約をもって違約手附の約定をすることは、民法557条(解約手附)の規定により禁止されるものではない。 2. 違約手附の特約が契約関係清算のための損害賠償額の予定(民法420条)を含むと解される場合、債権者は契約解除の手続を経ることなく、直ちに当該予定額の支払を請求し得る。 3. 違約金の額が公序良俗(民法90条)に反するか否かは、既払の手附金を除いた実質的な負担額と売買代金との比率を考慮して判断する。
重要事実
上告人(売主)は被上告人(買主)との間で土地売買契約を締結し、手附金18万円を受領した。契約には「土地の引渡し等に故障がある場合は売主の責任で解決し、義務を履行しないときは手附倍額を違約金として支払う」旨の特約(本件特約)があった。その後、本件土地は上告人の国税滞納により公売され、第三者の所有に帰したため、被上告人らへの引渡しが不能となった。被上告人らは、本件特約に基づき手附倍額(36万円)の支払を求めて提訴した。
あてはめ
1. 契約当事者が合意により違約手附を定めることは私法上の自由であり、解約手附の規定によって妨げられない。 2. 本件特約は、土地引渡し不能等の債務不履行が生じた際の損害賠償額の予定であると認定できる。したがって、法的な解除手続を待たずに請求権が発生すると解するのが特約の趣旨に合致する。 3. 本件では既払の手附金18万円があるため、36万円の倍戻を命じても上告人の実質的負担は18万円である。これは売買価格48万円の8分の3に相当し、暴利とはいえないため、公序良俗に反しない。
結論
違約手附の特約は有効であり、債務不履行が確定した以上、契約解除を要せず手附倍額の支払請求が認められる。また、本件の額は公序良俗に反しない。
実務上の射程
契約書における違約金条項が「損害賠償額の予定」の性質を有する場合、解除権の行使を請求の要件とするか否かは特約の解釈による。本判例は、文言上「解除」を要件としていなければ、不履行により直ちに予定額の請求が可能であるとする実務上の指針となる。
事件番号: 昭和30(オ)508 / 裁判年月日: 昭和31年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の解除に伴う損害賠償について、民法上の解除としての効力が認められない場合であっても、当事者間で損害金支払に関する合意が成立している場合には、当該合意に基づき履行を請求することが認められる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間の不動産売買契約に関し、被上告人は当初、民法上の規定に基づく契…