判旨
地方自治法上の選挙訴訟において、市選挙管理委員会の処分に対し県選挙管理委員会へ訴願を経た場合、訴訟における被告は裁決を行った県選挙管理委員会とすべきであり、これと別に市選挙管理委員会を被告とする訴えを提起する必要はない。
問題の所在(論点)
地方自治法に基づく選挙訴訟において、不服申立て(訴願)を経た後に提起する取消訴訟の被告は誰か。また、裁決庁を被告とする訴えに加えて、処分庁を被告とする訴えを提起する必要があるか。
規範
処分から訴願を経て訴訟に至る一連の手続過程において、訴訟の不服対象は第一次的には訴願に対する裁決である。したがって、訴訟においては裁決を行った行政庁(本件では県選挙管理委員会)を被告とするのが原則的な法理であり、また、裁決取消訴訟等の判決の効力は行政事件訴訟特例法(現行行政事件訴訟法)により処分庁をも拘束するため、裁決庁を被告とすれば足りる。
重要事実
上告人は、市選挙管理委員会(以下「市委」)の処分に不服があり、県選挙管理委員会(以下「県委」)に対して訴願を提起した。県委は当該訴願を形式的理由により却下する裁決を行った。上告人は、県委を被告として市委の告示(処分)の取消しを求める訴えを提起したが、併せて処分庁である市委をも被告として訴えを提起したため、市委を被告とする部分の適法性が争点となった。
あてはめ
地方自治法上の選挙訴訟は県委の裁決を経ることが必要であり、不服の対象はまず県委の裁決となる。県委が処分を取り消した場合に県委が被告となることとの統一性を考慮すれば、県委が処分を支持または却下した場合でも裁決庁である県委を被告とすべきである。さらに、県委を被告とする訴えの効力は市委にも及ぶため、市委を重ねて被告として訴えを提起する必要性は認められない。
結論
本件における被告は県選挙管理委員会とすべきであり、市選挙管理委員会を被告とする訴えは必要がないため却下される。
事件番号: 昭和23(オ)165 / 裁判年月日: 昭和24年8月9日 / 結論: 棄却
一 選挙に関する訴願を不適法として県選挙管理委員会がこれを却下した場合においても、裁判所が選挙又は当選の効力について判決をすることは違法ではない。 二 訴願を裁決した県選挙管理委員会を被告とする訴訟の判決で、市選挙管理委員会のした告示を取り消すことは違法ではない。 三 当選訴訟で当選の有効であることを確認する判決は違法…
実務上の射程
本判決は現行の行政事件訴訟法における被告適格(11条)および裁決主義(公職選挙法203条、207条等)の解釈指針となる。選挙訴訟のように審査請求(旧訴願)が前置される場合、原則として裁決庁を被告とすべきであることを示しており、被告の選択誤りによる訴えの不適法を回避するための実務的な教訓となる。
事件番号: 昭和31(オ)808 / 裁判年月日: 昭和33年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】市町村選挙管理委員会は、上級審にあたる都道府県選挙管理委員会の訴願裁決を争う「不服がある者」には該当せず、選挙訴訟および住民投票の効力に関する訴訟において原告適格を有しない。 第1 事案の概要:町村合併促進法に基づく住民投票の効力に関し、市町村選挙管理委員会(下級審相当)が、都道府県選挙管理委員会…