判旨
市町村選挙管理委員会は、上級審にあたる都道府県選挙管理委員会の訴願裁決を争う「不服がある者」には該当せず、選挙訴訟および住民投票の効力に関する訴訟において原告適格を有しない。
問題の所在(論点)
市町村選挙管理委員会は、都道府県選挙管理委員会の裁決の取消しを求める訴訟において、公職選挙法203条1項(および準用規定)所定の「不服がある者」として当事者適格(原告適格)を有するか。
規範
公職選挙法(およびこれを準用する法令)に規定される、裁決の取消しを求める訴訟における「不服がある者」とは、法律上の利益を有する者に限られる。下級審にあたる異議決定機関が、その上級審にあたる訴願裁決機関の判断を争うことは、行政組織内部の権限分配の趣旨に照らして不合理であり、当該機関は「不服がある者」に包含されない。また、選挙管理委員会は地方公共団体の一個の機関にすぎず、権利能力・当事者能力を有しない。
重要事実
町村合併促進法に基づく住民投票の効力に関し、市町村選挙管理委員会(下級審相当)が、都道府県選挙管理委員会(上級審相当)による訴願裁決の内容を不服として、その取消しを求める訴訟を提起した。また、これに関連して個人らが当事者参加を申し立てた。これに対し、市町村選挙管理委員会に当該訴訟を遂行する当事者適格があるか、およびそれに伴う当事者参加の適法性が争点となった。
あてはめ
まず、選挙管理委員会は地方公共団体自体ではなく、その一部の機関にすぎないため、独立した権利能力や当事者能力を原則として有しない。次に、住民投票の効力に関する訴訟において、下級審的な役割を担う市町村選挙管理委員会が、上級審的な裁決を行った都道府県選挙管理委員会を攻撃することは、行政不服審査の仕組み上、不合理である。したがって、通常の選挙訴訟と同様、住民投票の場合においても、市町村選挙管理委員会は「不服がある者」には該当しない。本訴が不適法である以上、これを前提とする当事者参加も不適法となる。
結論
市町村選挙管理委員会は本件訴訟の当事者適格を欠き、本訴は不適法である。また、不適法な本訴を前提とする当事者参加も却下を免れない。
実務上の射程
行政機関が他の行政機関の判断を争う「機関訴訟」的な形態について、法律に特別の定めがない限り、行政機関自身は「不服がある者」としての原告適格を有しないことを示す。答案では、行政訴訟法上の原告適格の議論において、行政内部の不服申立て手続きとの論理的一貫性や、機関の独立性の限界を指摘する際に参照すべき判例である。
事件番号: 昭和28(オ)833 / 裁判年月日: 昭和29年6月15日 / 結論: 棄却
選挙管理委員会の委員は、委員長の委任があれば、当該選挙管理委員会を当事者とする訴訟で委員会を代理することができる。