村議会解散請求手続中の住民であつても、知事がしたその村と他の市町村との合併の取消を求める法律上の利益を有しない。
村議会解散請求手続中の住民であつても知事がしたその村と他の市町村との合併の取消を求める法律上の利益を有するか
地方自治法7条,地方自治法76条
判旨
地方自治法に基づく市町村合併の決定は、住民の具体的権利義務を直接規定する処分ではないため、住民には当該決定自体の取消しを求める訴えの利益が認められない。議会解散請求権を行使中の住民であっても、同様に法律上の利益を有しない。
問題の所在(論点)
市町村の合併決定という行政処分に対し、当該市町村の住民がその取消しを求める訴えの利益(法律上の利益)を有するか。また、住民が議会解散請求手続中であることは、この判断に影響を及ぼすか。
規範
行政処分に対する取消訴訟において、訴えの利益(原告適格・法律上の利益)が認められるためには、当該処分が国民の具体的権利義務を直接左右する性質を有する必要がある。法律に特別な規定がない限り、住民としての地位に基づく抽象的な利益や、処分の適否を争うこと自体には法律上の利益は認められない。
重要事実
兵庫県知事は、a村住民による村議会解散請求の手続中、解散投票を待たずに地方自治法7条1項に基づきa村の神戸市への合併を決定した。これに対し、a村住民である上告人が、当該合併決定は住民の議会解散請求権を妨害するものであり違法であるとして、処分の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
地方自治法7条1項による知事の合併決定は、市町村の組織改編を目的とするものであり、住民の権利義務に直接関わる処分ではない。上告人は、自己の具体的権利義務の侵害を主張するのではなく、合併決定という処分そのものの違法を主張している。このような訴えを認める特別な法的根拠は存在しない。また、上告人が議会解散請求の手続中であったとしても、それは住民としての抽象的な地位に基づく権利行使に過ぎず、合併決定の直接の対象者となる法的利益を創設するものではない。
結論
上告人は本件合併決定の取消しを求める訴えの利益を有しないため、訴えは不適法として却下される(本件上告は棄却)。
実務上の射程
行政処分の「直接性」を厳格に要求した初期の判例。現代の行政訴訟法における原告適格(9条)の判断においては、法律により保護された利益の有無が重視されるが、自治体再編のような制度的処分については依然として住民個人の原告適格を否定する方向の有力な指針となる。
事件番号: 昭和28(オ)1285 / 裁判年月日: 昭和30年12月1日 / 結論: 棄却
市町村の住民は都道府県知事がしたその市町村合併の取消を求める法律上の利益を有しない。
事件番号: 昭和28(オ)737 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
昭和二三年法律第一七九号地方自治法改正法附則第二条(昭和二五年法律第一四三号による改正前)による住民投票において有効投票の過半数が分離に賛成であつても、住民は分離を請求する権利を有するものではない。