昭和二三年法律第一七九号地方自治法改正法附則第二条(昭和二五年法律第一四三号による改正前)による住民投票において有効投票の過半数が分離に賛成であつても、住民は分離を請求する権利を有するものではない。
昭和二三年法律第一七九号地方自治法改正法附則第二条(昭和二五年法律第一四三号による改正前)による住民投票と住民の分離請求権
昭和23年法律179号地方自治法改正法(昭和25年法律143号による改正前)附則2条
判旨
市町村の境界変更等は、住民投票の意思のみによって決定されるのではなく、都道府県議会の議決を要する。したがって、住民は投票結果に従った決定を請求する公法上の権利を有さず、議会の否決に基づく不作為等の取消しを求める訴えの利益も認められない。
問題の所在(論点)
市町村の境界変更において、住民は住民投票の結果に基づき、知事に対してその通りに決定することを請求する法律上の権利(公法上の権利)を有するか。また、議会の否決等に対して取消訴訟を提起する原告適格や訴えの利益が認められるか。
規範
地方自治法7条の原則に基づき、市町村の廃置分合や境界変更は都道府県議会の議決を経た知事の決定に委ねられている。法律の附則等に住民投票の規定がある場合でも、それは議決等の手続を前提とするものであり、住民の意思のみによって分離等が決定されるという直接的な決定権や、投票結果通りの決定を請求する具体的な公法上の権利を住民に付与するものではない。
重要事実
ある市町村の境界変更(分離)を希望する住民らが、法律の附則に基づき住民投票を実施した。しかし、都道府県議会が当該分離案を否決し、知事も分離しない旨の決定(または不作為)を行った。これに対し、住民側が住民投票の決定権を根拠として、知事の決定の取消し等を求めて提訴した事案である。
あてはめ
地方自治法附則2条1項の「住民は……境界変更をすることができる」との規定は、同条5項が都道府県議会の議決を要件としている以上、住民に最終的な決定権を認めたものではない。本件においても、分離は県議会の議決を待つ必要がある。住民に「投票通りに決定することを請求する権利」がない以上、議会が否決し知事が分離しない決定をしても、住民の法的権利が侵害されたとはいえず、取消しを請求する訴えは認められない。また、本来棄却すべき事案を原審が訴却下とした点は、上告人にとって不利益ではないため、判決は維持される。
結論
住民は境界変更を請求する法律上の権利を有しない。したがって、議会の否決等に基づく知事の決定を争う訴えは認められず、請求は棄却(または不利益変更禁止の範囲で訴却下を維持)される。
実務上の射程
地方自治における住民の直接参政権的制度の限界を示した判例である。法律上の利益(行訴法9条)の有無を判断する際、行政手続への住民参加が直ちに実体法上の権利付与を意味しないことを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1285 / 裁判年月日: 昭和30年12月1日 / 結論: 棄却
市町村の住民は都道府県知事がしたその市町村合併の取消を求める法律上の利益を有しない。