選挙管理委員会の委員は、委員長の委任があれば、当該選挙管理委員会を当事者とする訴訟で委員会を代理することができる。
選挙管理委員会の委員がその委員会を当事者とする訴訟で委員会を代理とすることの適否
地方自治法187条2項,地方自治法193条,地方自治法153条1項,弁護士法25条
判旨
地方自治法上の選挙管理委員会委員長は、吏員を臨時に代理させることができる旨の規定の趣旨に照らし、委員に対しても委任により自己を代理させることができ、その代理人が行った訴訟行為は有効である。また、同一筆跡の投票であっても、直ちに不正投票と断定することはできず、代理投票の内容は投票の秘密に属するため、これを有効とした原審の判断は妥当である。
問題の所在(論点)
1.選挙管理委員会の委員長が、吏員ではない「委員」に対し、自己を代理して訴訟行為を行う権限を委任できるか。 2.同一筆跡の投票が存在する場合、これを直ちに不正投票として無効とすべきか。
規範
1.地方自治法193条及び153条1項の規定の趣旨に鑑み、選挙管理委員会の委員長は、吏員のみならず、委員に対しても委任によって自己を代理させることができる。 2.投票の有効性判断において、同一筆跡の投票が存在する場合であっても、諸般の事情から直ちに不正投票と断定できない限り、当該投票を無効とはしない。また、代理投票者が誰に投票したかは投票の秘密(憲法15条4項参照)に属し、その供述を直ちに信頼することもできない。
重要事実
上告人は、B県選挙管理委員会(以下「選管」)を相手取り選挙に関する訴訟を提起した。第一審段階で選管を代表していた委員長Dは、控訴審継続中に委員長を退任したが、引き続き委員の職に留まっていた。Dは新委員長から委任を受け、引き続き本件訴訟の訴訟行為を行った。また、本件選挙において同一の筆跡による3票が存在したため、上告人はこれが不正投票であり無効であると主張して争った。
あてはめ
1.法は委員長に吏員を臨時に代理させることを認めているが(地方自治法193条、153条1項)、その趣旨は委員会の円滑な運営にある。そうであれば、吏員以上に委員会の業務に精通する「委員」に対しても、委任があれば代理権を付与できると解するのが相当である。本件ではDに対し適切な委任があったため、Dの訴訟行為は有効である。 2.同一筆跡の3票については、上告人の主張する事実のみでは不正と断定できない。また、代理投票の内容は投票の秘密に属する性質上、証言等の証拠価値も慎重に判断されるべきであり、無効とはいえない。
結論
1.委員長は委員に自己の代理を委任でき、その訴訟行為は有効である。 2.本件の同一筆跡の投票を無効とはいえず、上告を棄却する。
実務上の射程
行政庁の代表権や代理権の範囲に関する解釈指針を示すものである。特に、明文で代理し得ると規定されている対象(吏員)以外の者であっても、法の趣旨に照らして合理的であれば代理権の委任を認める点に実務上の意義がある。また、選挙無効訴訟における投票の有効性判定において、筆跡の同一性のみならず投票の秘密との兼ね合いで厳格な立証を求める姿勢を示している。
事件番号: 昭和28(オ)832 / 裁判年月日: 昭和29年6月15日 / 結論: 破棄自判
一 候補者氏名敬称の下に「に」を記載した投票は無効である。 二 村議会議員選挙で県議会議員選挙の投票用紙を用いた投票は、かりに右投票用紙が選挙事務従事者から交付されたものであつても、無効である。