一 候補者の長男である投票管理者が自ら代理投票補助者としてした代理投票は無効である。 二 代理投票の違法管理の故に無効とされる投票はいわゆる潜在的無効投票ではない。
一 候補者の長男である投票管理者が自ら代理投票補助者としてした代理投票の効力 二 代理投票の違法管理の故に無効とされる投票はいわゆる潜在的無効投票か
公職選挙法48条,公職選挙法209条の2
判旨
投票管理者が候補者の近親者であり、立会人の意見を聴かず独断で自らを補助者に選任して代理投票を行った場合、選挙の自由公正を著しく害するため、当該投票は無効となる。
問題の所在(論点)
投票管理者が候補者の近親者であり、かつ独断で自らを補助者に選任して行った代理投票は、公職選挙法上の投票の自由公正の原則に反し無効となるか。また、その無効は潜在無効投票として扱われるべきか。
規範
代理投票が自由公正に行われたかにつき著しく他人の疑惑を招き、選挙法の基本理念たる投票の自由公正の原則に背く特段の事情がある場合には、当該代理投票は無効となる。この無効は、管理の違法により選挙人の真意が正確に表現されていることを保障しがたいことに基づくため、公職選挙法209条2項にいう「潜在無効投票」には該当しない。
重要事実
投票管理者が当該選挙の候補者の長男であった。この管理者は、投票立会人の意見を聞くことなく自己の一存で代理投票の補助者を選任し、さらに自らも補助者となって6票の代理投票を行った。この手続上の違法を理由に、当該投票の効力が争われた。
あてはめ
本件では、管理者が候補者の長男という密接な利害関係を有しながら、立会人の関与を排除して独断で補助事務を行っている。このような状況下での代理投票は、客観的に見て投票の自由公正を著しく阻害し、選挙人の真意が正しく反映されている保証を欠く。したがって、たとえ管理者に代理投票の補助を禁ずる直接の規定がなくても、実質的に自由公正の原則に悖るため無効と解すべきである。また、この無効は投票そのものの効力に関わるものであり、後の集計段階で考慮される潜在無効には当たらない。
結論
本件代理投票は無効である。管理者の不注意や違法手続に起因する場合であっても、選挙の公正を期する目的から、善意の当選人が不利益を被ることはやむを得ない。
実務上の射程
選挙管理手続の違法が投票の効力に及ぶ判断枠組みを示したもの。単なる形式的違法にとどまらず「自由公正の原則」に背く実質的な弊害がある場合に無効とする。公職選挙法209条2項の「潜在無効」との区別においても重要である。
事件番号: 昭和35(オ)463 / 裁判年月日: 昭和35年9月1日 / 結論: 棄却
投票管理者または投票立会人が代理投票補助者になつたため、その間投票管理者の職務執行者を欠きまたは立会人数が法定数を欠くに至つた違法があつても、投票管理者および立会人の職務執行上特に支障を来す事情が見受けられない場合には、その選挙を無効とすべきではない。