判旨
投票の記載から選挙人の意思を推測して有効投票と判断することは、憲法15条4項の定める投票の秘密を侵すものではなく、公職選挙法67条の解釈として正当である。
問題の所在(論点)
投票用紙の記載から選挙人の意図を推測して有効投票と判定することが、憲法15条4項の「投票の秘密」に抵触し、公職選挙法67条の解釈として許されないか。
規範
公職選挙法67条に基づく投票の有効性の判断において、投票の記載内容から選挙人の真意を合理的に推測し、特定の候補者への投票と認めることは、憲法15条4項の「投票の秘密」を侵害するものではない。
重要事実
選挙において、特定の候補者(D)に対する有効得票であるか否かが争われた複数の投票について、原審が選挙人の意を推測してDへの有効得票と判断した。これに対し上告人は、このような推測による有効判定は、憲法15条4項の投票の秘密を侵害し、公職選挙法67条の解釈として憲法違反であると主張して、判決の取り消しを求めた。
あてはめ
憲法が保障する投票の秘密は、誰が誰に投票したかを外部から探索されないことを保障するものであり、投じられた票そのものの記載内容から客観的に選挙人の意思を合理的に解釈・推認する行為は、個別の選挙人の投票行為を特定して暴露するものではない。したがって、記載から選挙人の意思を推測することは投票の秘密の趣旨とは何ら関係がないといえる。原審が示した有効得票としての判断は、客観的な記載に基づく合理的な解釈の範囲内であり、十分に肯定されるべきものである。
結論
投票の記載から選挙人の意思を推測することは投票の秘密と無関係であり、原判決の判断は合憲かつ正当である。
実務上の射程
公職選挙法上の無効投票(68条)の判断にあたり、記号の付記や氏名誤記があったとしても、可能な限り選挙人の真意を尊重して有効性を探る「有効優先の原則」を、投票の秘密との関係で肯定した点に意義がある。答案上は、記載が不明瞭な投票の有効性が争点となる場面で、選挙人の真意尊重と秘密保持の調和を基礎付ける論拠として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)108 / 裁判年月日: 昭和35年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の自書式投票において、候補者の氏名の一部が混記されたと疑われる記載であっても、その称呼が特定の候補者のものに酷似していると認められる場合には、当該候補者への有効投票と解するのが相当である。 第1 事案の概要:選挙において「D俊与」と「D垣健一郎」という二人の候補者が存在した。争点となっ…