投票管理者または投票立会人が代理投票補助者になつたため、その間投票管理者の職務執行者を欠きまたは立会人数が法定数を欠くに至つた違法があつても、投票管理者および立会人の職務執行上特に支障を来す事情が見受けられない場合には、その選挙を無効とすべきではない。
投票管理者または投票立会人が代理投票補助者となつたため投票管理者の職務執行者を欠きまたは立会人が法定数を欠くに至つた違法と選挙の効力。
公職選挙法37条,公職選挙法38条,公職選挙法205条1項
判旨
投票管理者や立会人が代理投票の補助者を兼ねることは、直ちに選挙規定違反とはならないが、職務遂行に支障を生じさせる事態に至れば違法となる。もっとも、その違法の程度が極めて軽微であり、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがない場合には、選挙無効(公職選挙法205条1項)とはならない。
問題の所在(論点)
投票管理者や投票立会人が代理投票の補助者を兼務し、一時的に管理者・立会人が法定数を欠く状態が生じた場合、公職選挙法205条1項の「選挙の規定に違反」に該当するか。また、その違反が「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」があるとして選挙を無効とすべきか。
規範
1. 投票管理者または投票立会人が代理投票の補助者となること自体は直ちに選挙規定に違反しないが、①投票管理者が立会人の意見を聴かず自己の一存で補助者を選任し、自らも補助者となって代理投票を行った場合、または②これによって管理者・立会人の法定数を欠き、その職務遂行に支障を生ずるような事態が発生した場合には、選挙規定違反となる。2. 上記の違反がある場合でも、公職選挙法205条1項にいう「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」がないときは、選挙は無効とならない。
重要事実
岡山県新見市長選挙において、24か所の投票所のうち23か所で投票立会人が代理投票の補助者を務めた。また、第2投票所では、候補者の長男である投票管理者が、立会人の意見を聴かずに自己の一存で立会人を補助者に選任し、自らも6票の代理投票を補助した。その間、管理者や立会人が一時的に法定数を欠く状態が生じたが、投票所の混雑状況等に照らし、投票監視等の職務遂行上、具体的な支障は生じていなかった。
あてはめ
第2投票所において、投票管理者が独断で補助者を選任し、自らも補助に従事して管理者・立会人の法定数を欠いた状態は、選挙規定に違反すると解される。しかし、当時の投票所の実情によれば、管理者および立会人の職務遂行上、特に支障を生ずべき事情は見受けられなかった。他の23か所の投票所においても、法定数を欠く事態はあったものの、投票監視等の職務遂行に支障は生じていない。したがって、これらの違反は極めて軽微なものにとどまる。代理投票自体の効力は格別、この程度の違反が選挙全体の結果に異動を及ぼすおそれがあるとは認められない。
結論
本件の選挙規定違反は極めて軽微であり、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないため、選挙を無効とする理由にはならない。上告棄却。
実務上の射程
公職選挙法205条1項の「選挙無効」の判断基準を示す射程を持つ。事務的な手続違反があっても、職務遂行に実質的な支障がなく、不正の介入等により選挙結果が変わる蓋然性がない場合には、選挙全体の効力は維持されるという実務上の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)462 / 裁判年月日: 昭和35年9月1日 / 結論: 棄却
一 候補者の長男である投票管理者が自ら代理投票補助者としてした代理投票は無効である。 二 代理投票の違法管理の故に無効とされる投票はいわゆる潜在的無効投票ではない。
事件番号: 昭和23(オ)165 / 裁判年月日: 昭和24年8月9日 / 結論: 棄却
一 選挙に関する訴願を不適法として県選挙管理委員会がこれを却下した場合においても、裁判所が選挙又は当選の効力について判決をすることは違法ではない。 二 訴願を裁決した県選挙管理委員会を被告とする訴訟の判決で、市選挙管理委員会のした告示を取り消すことは違法ではない。 三 当選訴訟で当選の有効であることを確認する判決は違法…