一 選挙に関する訴願を不適法として県選挙管理委員会がこれを却下した場合においても、裁判所が選挙又は当選の効力について判決をすることは違法ではない。 二 訴願を裁決した県選挙管理委員会を被告とする訴訟の判決で、市選挙管理委員会のした告示を取り消すことは違法ではない。 三 当選訴訟で当選の有効であることを確認する判決は違法ではない。 四 市議会は、正当の理由なくして市議員の辞職許可願を拒否することはできない。 五 地方自治法第六一条第二項の告示に対しては、同法第六六条によつて争訟を提起することができる。 六 地方自治法第六一条第二項の告示に対する異議申立期間は、右告示の日から一四日以内と解すべきである。
一 選挙に関する訴願却下の裁決と訴訟における選挙又は当選の効力に関する判決 二 訴願裁決庁を被告とする訴訟において原処分を取り消す判決の適否 三 当選を確認する判決の適否 四 市議会の議員辞職許可の権限 五 地方自治法第六一条第二項の告示に対する争訟の方法 六 地方自治法第六一条第二項の告示に対する異議申立期間
地方自治法66条,地方自治法66条3項,地方自治法66条4項,地方自治法60条3項,地方自治法126条,地方自治法61条2項,地方自治法66条1項
判旨
行政庁の裁量権の行使であっても、法律の精神に基づく条理上の限界を著しく逸脱し、その権限を不当に行使する場合には、当該行為の効力は否定される。議員が市長に当選し、就任のために行う議員辞職の許可を議会が正当な理由なく拒否することは、裁量権の逸脱として無効であり、許可がなくとも辞職の効力が生じる。
問題の所在(論点)
市議会が議員辞職を許可しないという裁量権の行使が、市長就任という目的がある場合に「裁量権の逸脱・濫用」として無効となり、許可なくして辞職の効力が認められるか。
規範
いかなる公の機関の裁量権であっても、その権限を付与した法律の精神に基づく条理上の限界があり、著しく裁量の範囲を逸脱してその権限を不当に行使することは許されない。そのような行為はもはや有効な行為とは認められず、法律の明文の有無にかかわらず、法の要求する条理に従いその効力を否定すべきである。
事件番号: 昭和23(オ)166 / 裁判年月日: 昭和24年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地方自治法上の選挙訴訟において、市選挙管理委員会の処分に対し県選挙管理委員会へ訴願を経た場合、訴訟における被告は裁決を行った県選挙管理委員会とすべきであり、これと別に市選挙管理委員会を被告とする訴えを提起する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、市選挙管理委員会(以下「市委」)の処分に不服があ…
重要事実
市議会議員である被上告人が市長選挙に当選し、当選を承諾して市長に就任するため、地方自治法126条に基づき議会に対し議員辞職の許可を求めた。しかし、市議会は正当な理由なくこの辞職を許可しなかった。被上告人はやむを得ず、許可のないまま市長当選承諾書を市選挙管理委員会に提出したが、委員会はこれを辞退とみなして欠員告示を行った。これに対し被上告人が当選の有効確認等を求めて出訴した事案である。
あてはめ
地方自治法126条が辞職に議会の許可を要するとしたのは、恣意的な濫用防止が目的であり、議会に辞職を不当に阻止する権限を与えたものではない。本件で被上告人が辞職を求めた理由は、公選された市長に就任するためであり、これに対して議会が拒否する正当な理由は見当たらない。正当な理由なく、あるいは当選承諾期間内に許可しないことは、法律が与えた権限の正当な行使とは認められない。したがって、このような著しい裁量権の逸脱がある場合には、許可がなくとも辞職の効力が発生すると解するのが、市民の意思を尊重する法の条理に適う。
結論
市議会による辞職拒否は無効であり、許可がなくとも辞職の効力は生じる。よって、被上告人の当選承諾は有効であり、市長としての地位が認められる。
実務上の射程
行政法における「裁量権の逸脱・濫用」の法理を、公選職の兼職禁止に伴う辞職許可という文脈で示した重要判例である。法律に例外規定がない場合でも、条理に基づき裁量の限界を画し、その効力を否定できることを明示した点で、行政裁量全般の答案構成において参照しうる。
事件番号: 昭和35(オ)463 / 裁判年月日: 昭和35年9月1日 / 結論: 棄却
投票管理者または投票立会人が代理投票補助者になつたため、その間投票管理者の職務執行者を欠きまたは立会人数が法定数を欠くに至つた違法があつても、投票管理者および立会人の職務執行上特に支障を来す事情が見受けられない場合には、その選挙を無効とすべきではない。
事件番号: 昭和34(オ)1064 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
選挙管理委員および同補充員を指名推選の方法により選任することは違法ではない。