判旨
判決文における「眞正」の脱落が明白な誤記である場合、裁判所はこれを更正可能であり、その証拠能力を否定する理由にはならない。また、証拠申出の採用の是非は事実審裁判所の広範な裁量に属し、必要でないと判断した証人の取調べを制限しても違法ではない。
問題の所在(論点)
判決書における明白な誤記が事実認定の効力に影響を及ぼすか。また、事実審裁判所が証拠申出の一部を採用しないことが、証拠調申請の不当な制限として採証法則に反するか。
規範
1. 判決書に明白な誤記がある場合、裁判所はいつでもこれを更正することができ、その誤記が判文の全趣旨からみて特定の事実を認めたものと解釈できる場合には、当該証拠に基づいた事実認定に違法はない。2. 証拠申出の採用は事実審裁判所の裁量権の範囲に属し、裁判所が必要でないと認める証拠を取り調べないことは、特段の事情がない限り証拠調申請の不当な制限には当たらない。
重要事実
上告人は、第一審判決において証拠(甲第1号証)につき「正に成立したものと認め得られる」と判示された点について、「眞正」の文字が欠けているため成立を認めたことにならないと主張した。また、証人Dの訊問調書の訂正が真実に反するものであることや、原審が申請した証人の一部(E、F)のみを尋問し、その他の証人を尋問しなかったことが証拠調の申請を不当に制限した違法なものであるとして上告した。
あてはめ
1. 原判決の「正に成立したもの」との表現は、判文全体の趣旨に照らせば「眞正に成立したもの」の明白な誤記であると認められる。このような誤記は更正可能であり、証拠能力を認める趣旨と解するに支障はない。2. 証人Dの調書の訂正については、訂正が供述の趣旨を正反対にするものであっても、その一事をもって直ちに不当な訂正とは断定できず、これを証拠とした判断に法則違反はない。3. 証人採用については、原審がE、Fの尋問で足りると判断し、余の証人を尋問しなかったことは裁判所の裁量の範囲内であり、手続上の違法は認められない。
結論
上告棄却。明白な誤記は事実認定の有効性を左右せず、証拠採用の要否に関する裁判所の判断は裁量の範囲内として適法である。
事件番号: 昭和24(オ)45 / 裁判年月日: 昭和24年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の所有権の帰属が争われる事案において、建物の修繕、火災保険料の支払い、敷地借地権の譲受けおよび敷地料の支払い等の事実は、所有権を認定するための有力な資料となる。また、判決正本の裁判官名の誤記が原本や調書から明らかな誤記と判断できる場合は、口頭弁論に関与しない裁判官が判決をした違法があるとはい…
実務上の射程
民事訴訟における事実認定のプロセスにおいて、裁判所の証拠採用に関する広範な裁量を再確認するものである。答案上では、証拠申出の採否が問題となる場面で、裁判所の裁量権を基礎づける判例として引用できる。
事件番号: 昭和23(オ)115 / 裁判年月日: 昭和24年4月12日 / 結論: 棄却
「口頭弁論調書」と題する書面に続いて編綴され、これと契印により連絡している証人調の顛末を録取した「調書」と題する書面は、口頭弁論調書の一部をなすものであるから、前者に証人某の出頭した旨が記載され、且つ、後者に裁判長が右証人を訊問した旨及びその陳述内容が記載されていれば、たとえ前者に右証人の訊問がなされた旨の記載がなくて…
事件番号: 昭和23(オ)128 / 裁判年月日: 昭和24年4月26日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法に基く農地の買収の場合においては、同法第九条の規定による買収令書の交付又はこれに代わるべき公告の手続がなされない限りは当該農地の所有権は、政府に移転しない。 二 農地調整法第四条は、所有権移転登記が虚偽の意思表示に基くものであることを理由として、その登記名義回復のため所有権移転登記手続をする場合…
事件番号: 昭和24(オ)49 / 裁判年月日: 昭和24年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】既判力の標準時は口頭弁論終結時であり、終結時点で被告が所有者であれば、その後の目的物喪失は判決の正当性に影響せず、履行不能による執行の問題にとどまる。 第1 事案の概要:上告人(被告)から被上告人(原告)への土地所有権移転登記手続を命じる訴訟において、原審の最終口頭弁論期日は昭和23年9月13日で…
事件番号: 昭和33(オ)258 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審が行った証拠の取捨選択および事実認定が適法である限り、上告審においてこれと異なる事実を主張して原判決を非難することは、上告理由にならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が認定した売買の事実について、証拠の取捨選択や事実認定に誤りがあるとして、原判決の違法を主張し、上告を申し立てた。なお、…