一 自作農創設特別措置法に基く農地の買収の場合においては、同法第九条の規定による買収令書の交付又はこれに代わるべき公告の手続がなされない限りは当該農地の所有権は、政府に移転しない。 二 農地調整法第四条は、所有権移転登記が虚偽の意思表示に基くものであることを理由として、その登記名義回復のため所有権移転登記手続をする場合には、適用がない。
一 自作農創設特別措置法に基く農地買収による所有権の移転 二 登記名義の回復のためにする所有権移転登記手続と農地調整法第四条
自作農創設特別措置法3条1項,自作農創設特別措置法9条1項,自作農創設特別措置法12条1項,農地調整法4条
判旨
農地の所有権移転登記手続の請求であっても、それが虚偽表示に基づく無効な登記の名義回復を目的とする場合には、農地調整法4条の制限(許可)を受けない。また、自作農創設特別措置法による農地買収は、買収令書の交付または公告があって初めて所有権が政府に移転する。
問題の所在(論点)
1. 農地買収計画の作成及び承認のみによって、農地の所有権が政府に移転するか。 2. 実体上の権利移動を伴わない「虚偽表示に基づく登記の名義回復」を求める請求について、農地調整法4条(現・農地法3条等)の許可を要するか。
規範
1. 自作農創設特別措置法に基づく政府の農地買収において、農地の所有権が政府に移転するのは、都道府県知事による買収令書の交付またはこれに代わる公告がなされた時点(同法12条1項)である。2. 農地調整法4条(現行農地法3条参照)が制限する「農地の所有権移転」とは、当事者の合意等により実体上の所有権を新たに取得させる行為を指し、実体関係に基づかない不実の登記を是正するための名義回復行為はこれに含まれない。
重要事実
被上告人(原告)の先代及び被上告人が、上告人(被告)に対して行った本件土地の所有権移転登記は、虚偽の意思表示に基づくものであった。そのため、被上告人は上告人に対し、所有権が当初から上告人に移転していないことを理由として、所有権移転登記手続(登記名義の回復)を求めて提訴した。これに対し上告人は、農地買収計画の存在や農地調整法による移転制限を理由に、当該請求は認められない旨を主張して争った。
事件番号: 昭和24(オ)118 / 裁判年月日: 昭和28年6月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において、買主が買い受けた土地を学校敷地として無償提供する等の事情は、原則として単なる動機にすぎない。かかる動機が特に当事者間で表示され、法律行為の内容とされたと認められない限り、当該事情の不一致は要素の錯誤に当たらない。 第1 事案の概要:売主である上告人は、第三者D・Eらから「被上告人…
あてはめ
1. 自作農創設特別措置法によれば、市町村農地委員会が買収計画を定め都道府県農地委員会が承認しても、それは買収の基礎となる計画の確定にすぎない。同法12条1項の規定に基づき、知事による買収令書の交付または公告という手続がなされない限り、政府は所有権を取得しない。 2. 被上告人の請求は、新たな権利移動を求めるものではなく、虚偽表示により実体なく移転した登記名義を現実の権利者に回復させるものである。農地調整法4条は当事者の合意による権利移転を制限するものであり、単なる登記名義の回復を制限する規定は存在しない。
結論
1. 買収令書の交付等がない限り、政府への所有権移転は認められない。 2. 虚偽表示に基づく登記名義の回復請求には農地調整法の制限は適用されない。したがって、被上告人の請求を認容した原判決は正当である。
実務上の射程
農地法上の「権利移動」の意義を明確にした重要判例。答案上では、農地法3条等の許可を要するか否かの場面で、それが「実体上の権利移動」を伴うものか、あるいは単なる「登記名義の回復(真正な登記名義の回復等)」に留まるものかを区別する際に活用する。
事件番号: 昭和23(オ)159 / 裁判年月日: 昭和24年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決文における「眞正」の脱落が明白な誤記である場合、裁判所はこれを更正可能であり、その証拠能力を否定する理由にはならない。また、証拠申出の採用の是非は事実審裁判所の広範な裁量に属し、必要でないと判断した証人の取調べを制限しても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、第一審判決において証拠(甲第…
事件番号: 昭和23(オ)147 / 裁判年月日: 昭和24年11月8日 / 結論: 破棄差戻
売買は常に時価でなされるとは限らないばかりでなく、特に売買の目的物中に統制価格ある物を含む場合は、統制価格にかかわらずこれより高い時価で売買がなされたものと推定すべきではない。
事件番号: 昭和23(オ)119 / 裁判年月日: 昭和24年10月4日 / 結論: 破棄差戻
売買契約書に「買主本契約ヲ不履行ノ時ハ手附金ハ売主ニ於テ没収シ、返却ノ義務ナキモノトス。売主不履行ノ時ハ買主ヘ既収手附金ヲ返還スルト同時ニ手附金ト同額ヲ違約金トシテ別ニ賠償シ以テ各損害補償ニ供スルモノトス。」という条項があることだけでは、民法第五五七条の適用を排除する意思表示があつたものということはできない。
事件番号: 昭和23(オ)117 / 裁判年月日: 昭和24年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】双務契約において、相手方の代金支払義務の不履行を理由とする履行遅滞の効果を主張するには、自己の負担する反対債務(所有権移転登記義務等)につき、適法な履行の提供を完了していることが必要である。 第1 事案の概要:売主である上告人と買主である被上告人は、山林の売買契約を締結し、残代金4万5000円の支…