売買は常に時価でなされるとは限らないばかりでなく、特に売買の目的物中に統制価格ある物を含む場合は、統制価格にかかわらずこれより高い時価で売買がなされたものと推定すべきではない。
統制価格ある物の売買価格の推定と時価
民訴法257条
判旨
一括売買された物件の中に統制価格のある宅地が含まれる場合、単に時価の比率を総代金に乗じるだけで当該宅地の売買代金を確定することはできず、個別の現実の売買代金を確定すべきである。
問題の所在(論点)
複数の物件を一括して売買した場合において、その一部の物件(統制価格のある宅地)の売買代金を、時価の比率に基づいて算定し認定することの可否。
規範
売買代金は常に時価と一致するとは限らず、当事者の事情により時価と乖離することは稀ではない。特に統制価格が存在する物件を含む売買においては、単なる時価比率による按分計算ではなく、証拠等に基づき、当該物件について合意された現実の売買代金を個別に確定する必要がある。
重要事実
上告人と被上告人は、宅地89坪を含む物件全体を4万円で売買した。原審は、当該宅地の時価が総代金の22%(8,900円程度)である点に当事者間の争いがないことを理由に、4万円に22%を乗じた8,800円を当該宅地の代金と認定し、宅地建物等価格統制令違反の有無を判断した。
事件番号: 昭和23(オ)117 / 裁判年月日: 昭和24年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】双務契約において、相手方の代金支払義務の不履行を理由とする履行遅滞の効果を主張するには、自己の負担する反対債務(所有権移転登記義務等)につき、適法な履行の提供を完了していることが必要である。 第1 事案の概要:売主である上告人と買主である被上告人は、山林の売買契約を締結し、残代金4万5000円の支…
あてはめ
本件では、宅地の時価(8,900円)が総代金(4万円)の22%程度である事実に争いはないが、これは算数上の計算に過ぎない。現実の売買価格は、当事者の知識不足や特別な事情により時価と異なることがある。とりわけ、統制価格が存在する本件のような場合には、当事者が統制価格を無視して時価で売買したと安易に推断することは許されない。
結論
時価比率のみから現実の代金を認定した原審の判断は、理由不備の違法があり、破棄を免れない。具体的な証拠に基づき、当該宅地の現実の売買代金を確定し直すべきである。
実務上の射程
価格統制法令違反が問題となる場面に限らず、一括売買における個別物件の代金認定が問題となる実務一般に及ぶ。特に、私法上の効力や公法上の規制が個別の価格に依存する場合、単なる按分計算による事実認定の危険性を指摘する際に有用である。
事件番号: 昭和23(オ)119 / 裁判年月日: 昭和24年10月4日 / 結論: 破棄差戻
売買契約書に「買主本契約ヲ不履行ノ時ハ手附金ハ売主ニ於テ没収シ、返却ノ義務ナキモノトス。売主不履行ノ時ハ買主ヘ既収手附金ヲ返還スルト同時ニ手附金ト同額ヲ違約金トシテ別ニ賠償シ以テ各損害補償ニ供スルモノトス。」という条項があることだけでは、民法第五五七条の適用を排除する意思表示があつたものということはできない。
事件番号: 昭和23(オ)128 / 裁判年月日: 昭和24年4月26日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法に基く農地の買収の場合においては、同法第九条の規定による買収令書の交付又はこれに代わるべき公告の手続がなされない限りは当該農地の所有権は、政府に移転しない。 二 農地調整法第四条は、所有権移転登記が虚偽の意思表示に基くものであることを理由として、その登記名義回復のため所有権移転登記手続をする場合…
事件番号: 昭和27(オ)1120 / 裁判年月日: 昭和29年10月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の買主が、当該不動産を第三者に転売し、その第三者が既に所有権移転登記を完了している場合には、買主は売主に対して自己への所有権移転登記を請求することはできない。 第1 事案の概要:上告人(買主)は、被上告人(売主)から本件不動産を買い受けたが、その後、当該不動産を第三者Dに転売した。Dは、上告…