判旨
調停条項の解釈にあたっては、申立の趣旨、調停に至る経緯、および調停成立後の条件等を総合的に考慮して、その効力が及ぶ対象範囲を確定すべきである。
問題の所在(論点)
調停条項において、その対象となる不動産の範囲に、第三者が占有し債務者が賃借していなかった部分(二階七坪)が包含されるか。条項の解釈が問題となる。
規範
調停条項の対象範囲の確定は、申立人の本来の意図(申立の趣旨)、対象物の占有実態、および成立した調停内容と従前の契約条件との整合性を客観的に合理的な意思解釈の枠組みによって判断する。
重要事実
被上告人が上告人に対し、居住部分全部の明渡しを求めて調停を申し立てた。当時、二階部分(七坪)は第三者Dが被上告人から直接賃借して居住しており、上告人は当該部分を賃借していなかった。その後調停が成立したが、調停成立後の賃料は従前と同一額に定められていた。
あてはめ
被上告人の調停申立は「上告人の居住部分全部」の明渡しを求める趣旨であった。対象の二階七坪は、調停前から第三者Dが直接被上告人から賃借しており、上告人が賃借していた事実はない。また、調停後の賃料が従前と同額であることは、上告人の使用範囲に変更がなかったことを裏付ける。これらの事実を総合すれば、当該部分は調停条項に包含されていないと解するのが妥当である。
結論
本件の二階七坪は調停条項に包含されない。したがって、これに基づく上告人の錯誤や同時履行の抗弁等の主張は認められない。
実務上の射程
調停条項や和解条項の解釈において、文言のみならず、申立の趣旨や占有の合意形成過程を重視する判断枠組みとして、不動産引渡請求事件等における条項の射程確定に利用できる。
事件番号: 昭和25(オ)29 / 裁判年月日: 昭和27年2月8日 / 結論: 棄却
一 調停において、当事者の一方が相手方に譲渡することを約した特定の土地が、当時他人の所有であつたからとて、単にそれだけでは、右調停は履行不能により無効であるということはできない。 二 一旦、調停の成立した法律関係につきその後再度の調停申立がなされ裁判所が戦時民事特別法第一九条、金銭債務臨時調停法第七条による調停に代わる…
事件番号: 昭和25(オ)123 / 裁判年月日: 昭和28年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において、第三者が目的物を明け渡すことが契約の前提となっていたとしても、それが単なる期待に過ぎない場合は「動機の錯誤」にとどまり、契約の要素の錯誤には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、本件家屋に居住するDが未だ明け渡しの承諾をしていないにもかかわらず、相手方(被上告人等の先代)に対…