借地借家調停調書に単に家屋を「昭和二三年九月一〇日まで賃貸する」と記載されただけであつても、右調停期日に当事者間において、右家屋を右約定の日かぎり明け渡す旨の合意が成立した以上、賃貸人はこれを理由として家屋明渡の請求をすることができる。
調停成立当時その調書に記載されない(家屋明渡に関する)合意が成立したことを理由とする家屋明渡請求の許否
民訴法203条,民訴法199条,民法604条
判旨
調停調書に「一定の期日まで賃貸する」旨の記載がある場合でも、当該期日に明渡す旨の合意が別途成立したことを認定し、これを根拠に明渡しを命じることは矛盾しない。調停条項が明示的に執行力を有しない内容であっても、当事者間の実体法上の明渡合意を立証して給付判決を求めることが可能である。
問題の所在(論点)
調停条項に「一定期日まで賃貸する」との記載がある場合に、それとは別に当該期日に明渡す旨の合意が成立したと認定して明渡しを命じることができるか。調停条項の解釈と事実認定の整合性が問題となる。
規範
調停条項が特定の期限までの賃貸を定めている場合、それは当該期限までの明渡請求をしないことを合意したものと解される。一方、期限後の明渡義務については、調停条項から直接導けない場合であっても、調停期日における当事者間の実体的な合意の有無を証拠に基づき認定することができ、その合意が認められれば明渡請求は正当化される。
重要事実
上告人と被上告人の間の調停において、調書に本件家屋を「昭和23年9月10日まで賃貸する」旨の条項が記載された。上告人は、これは賃料据置きの合意に過ぎず明渡合意はないと主張したが、原審は証拠に基づき、同日に明渡す旨の合意が成立したと認定した。上告人は、調停条項の記載と明渡合意の認定が矛盾するとして上告した。
あてはめ
本件調停条項は、指定された期日までは明渡請求をしないことを定めたものと解されるが、期日経過後の明渡義務を直接明示しているわけではない。そのため、当該調書のみで直ちに明渡しの強制執行をすることはできない。しかし、被上告人が調停期日において別途明渡しの合意が成立したことを主張・立証し、裁判所が自由心証に基づきその事実を認定することは、調停条項の内容と矛盾せず、並行して存立し得る。
結論
調停条項と明渡合意の認定に矛盾はなく、実体法上の合意に基づき明渡請求を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
調停条項に執行力が認められない不完全な記載(単なる期限の定め等)しかない場合であっても、別途実体法上の合意を主張・立証することで給付の訴えを提起できることを示す。実務上、調停条項の解釈のみならず、その背後にある当事者の合意形成過程を認定の対象とする際の指針となる。
事件番号: 昭和25(オ)290 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約成立後に賃料の改定がなされた場合であっても、特段の事情がない限り、賃貸借関係の同一性は失われない。したがって、賃料改定前に成立した裁判上の和解条項の効力は、改定後も維持される。 第1 事案の概要:賃貸人と賃借人との間で、賃貸借契約に関する裁判上の和解が成立していた。その後、当該契約に係る…