判旨
事実認定の前提となる証拠の取捨判断は、特段の事情がない限り、原審である事実審の専権に属する事項である。したがって、原審の証拠選択や事実認定に違法があるとする主張は、単なる事実誤認の主張であって、適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
事実審が行った証拠の取捨選択や事実認定の適否を、適法な上告理由(民事訴訟法旧401条、現312条等)として主張することができるか。
規範
証拠の取捨判断及び事実の認定は、事実審裁判所の専権に属する事項である(自由心証主義の原則)。そのため、原審の認定した事実に違法があることを主張することは、それが単なる事実誤認の指摘に留まる限り、法律審である最高裁判所への適法な上告理由とはならない。
重要事実
上告人は、原判決における事実認定に違法があるとして、複数の上告理由を申し立てた。具体的には、原審が行った証拠の取捨判断(どの証拠を採用し、どの証拠を斥けるかという判断)に誤りがあることを詳細に主張し、その結果導き出された事実認定を非難するものであった。
あてはめ
最高裁判所は、記録を精査した結果、原判決に所論のような違法は認められないと判断した。上告人の主張は多岐にわたるものの、結局のところ原審の専権に属する「証拠の取捨判断」を争うものであり、ひいては原審の「事実認定」を非難するものに帰着すると評価される。このように事実認定の当否を争う主張は、法律上の違法を指摘するものではなく、上告理由としての実質を欠くものといえる。
結論
本件上告は理由がないため、棄却される。原審の証拠取捨判断および事実認定は適法であり、これを争う主張は採用されない。
実務上の射程
司法試験の答案上では、民事訴訟法における自由心証主義(247条)の限界や、上告理由(312条)の適格性を論じる際に引用し得る。特に事実認定の不可侵性を指摘する文脈で、「証拠の取捨選択は事実審の専権に属する」という定型フレーズとして活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)252 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定における証拠の取捨判断は事実審の裁量権の範囲に属し、適法に行われた判断を上告審で争うことはできない。賃貸借契約の成否という事実関係の認定が証拠に照らして肯認できる場合、上告は棄却されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は、本件家屋について賃貸借契約が成立している旨を抗弁として主張した。…