甲地に隣接する乙地の所有者が甲地の全部を時効取得したときは、甲地の所有者は、右両地の境界確定の訴えの原告適格を失う。
隣接する土地の全部の時効取得と境界確定の訴えの原告適格
民法162条,民法223条,民訴法45条,民訴法第2編第1章訴
判旨
境界確定の訴えは、相隣接する土地の各所有者が境界を確定するにつき最も密接な利害を有する者として当事者となる。したがって、訴訟中に係争地の所有権を完全に喪失した者は、当該訴えの原告適格を失い、その訴えは不適法として却下される。
問題の所在(論点)
境界確定の訴えの係属中に、原告が対象土地の所有権を喪失した場合、当該原告に境界確定を求める訴えの当事者適格(原告適格)が認められるか。
規範
境界確定の訴えは、公簿上の地番で表示される隣接地の境界が事実上不明な場合に、裁判によって境界を画定する形式的形成訴訟である。本案判決を得るための資格(当事者適格)については、相隣接する各土地の所有者が、境界確定について「最も密接な利害を有する者」としてこれに該当すると解すべきである。
重要事実
上告人は、自身が所有する土地(a町字b c番)と、これに隣接する被上告人所有の土地(同所d番)との境界確定を求めて提訴した。しかし、訴訟の過程において、上告人の所有であったc番の土地全部について、被上告人による時効取得が成立した。その結果、上告人は当該土地の所有権を完全に喪失するに至った。
あてはめ
境界確定の訴えの当事者は、隣接する土地の所有者であることが前提となる。本件において、上告人はもともとc番の土地を所有していたが、被上告人の時効取得によってその所有権を完全に失っている。所有権を喪失した以上、もはや上告人は隣接地の所有者ではなく、境界を確定させることについて「最も密接な利害を有する者」とはいえない。したがって、上告人の原告適格は消滅したと評価される。
結論
上告人は境界確定を求める訴えについての原告適格を失ったため、本件訴えは不適法として却下を免れない。
実務上の射程
境界確定の訴えが「所有者」間の争いであることを明示した。実務上、訴訟承継(民訴法49条、50条)がなされない限り、所有権の喪失が直ちに不適法(却下)に直結することを示す。土地の所有権存否が前提となるため、所有権確認訴訟との併合提起や、時効抗弁による所有権喪失のリスクを検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和57(オ)97 / 裁判年月日: 昭和58年10月18日 / 結論: 棄却
隣接する甲乙両地の各所有者間の境界確定訴訟において、甲地のうち右境界の一部に接続する部分につき乙地の所有者の時効取得が認められても、甲地の所有者は、右境界部分についても境界確定を求めることができる。