一、(省略) 二、取得時効の成否は、境界確定の訴における境界確定とは関係がない。
一、上告裁判所である高等裁判所の意見が前に上告裁判所である大審院の法令の解釈についてした判決に反するとして事件が最高裁判所に移送された事例 二、境界確定の訴と取得時効
民訴法406条ノ2,民訴規則58条2号,民法162条,民法223条,民訴法225条
判旨
境界確定の訴えは、隣接する土地の境界を裁判により客観的に画定するものであり、所有権の範囲の確認を目的とするものではないため、取得時効の成否は境界確定の結果に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
境界確定の訴えにおいて、隣接する土地の一部の取得時効が成立しているという事由は、裁判所が確定すべき「境界」の判断に影響を及ぼすか(取得時効の抗弁の許否)。
規範
境界確定の訴えは、隣接する土地の公法上の境界が不明である場合に、裁判によって客観的にこれを確定させる訴え(形式的形成訴訟)である。これは各土地の所有権の範囲の確認を目的とするものではなく、各土地の範囲自体(不動産登記法上の地番と地番の境)を定める性質を有する。したがって、当事者が隣接地の一部を時効取得したとしても、それにより公法上の土地の境界(筆界)自体が移動するわけではない。
重要事実
上告人と被上告人は、隣接するa番地cの土地とa番地bの土地の所有者である。上告人は、隣接する土地の一部について時効取得を主張し、その範囲に基づいて境界が確定されるべきであるとして、境界確定の訴えにおいて取得時効の抗弁を主張した。原審は、取得時効の成否は境界確定とは無関係であると判断し、客観的な境界をAB線と認定したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
境界確定の訴えの目的は、個人の権利関係である所有権の帰属を確認することではなく、事実上不明となっている土地の地番的な区切りを公法的に確定することにある。上告人が仮に隣接するa番地bの土地の一部を時効取得したとしても、それは私法上の所有権移転を生じさせるにすぎず、a番地cとa番地bという登記上の各土地の公法的な境界線を移動させる根拠にはならない。したがって、時効取得に基づく所有権の主張は、別途所有権確認の訴え等で解決すべき問題であり、境界確定の判断において考慮する必要はない。
結論
境界確定の訴えにおいて取得時効の抗弁は認められない。原審が取得時効の成否を考慮せずに境界を認定した判断は正当であり、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
境界確定の訴え(公法上の筆界を求めるもの)と、所有権確認の訴え(私法上の所有権の境界、いわゆる所有権界を求めるもの)を峻別する基準となる。実務上、筆界と占有状態が一致しない場合は、境界確定の訴えとは別に、または併合して、所有権確認の訴えを提起する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和39(オ)915 / 裁判年月日: 昭和41年5月20日 / 結論: 棄却
一 境界確定の訴は、当事者相互の相接する各所有地間の境界に争があるため、その境界を現地に即し具体的に定める創設的判決を求める訴である。 二 境界確定の訴にあつては、当事者相互の相接する各所有地間の境界が不明であるかまたはこれに争があることの主張がなされれば足り、原告において特定の境界線の存在を主張する必要はない。 三 …
事件番号: 昭和41(オ)118 / 裁判年月日: 昭和42年12月26日 / 結論: 破棄差戻
隣接土地所有者間に境界についての合意が成立したことのみによつて、右合意のとおりの境界を確定することは許されない。