公簿上特定の地番により表示される甲乙両地が相隣接する場合に、乙地の所有者が甲地のうち境界の全部に接続する部分を時効取得したとしても、甲乙両地の各所有者は、境界確定の訴えの当事者適格を失わない。
境界の全部に接続する土地部分の時効取得と境界確定の訴えの当事者適格
民法162条,民訴法45条,民訴法第2編第1章訴
判旨
境界確定の訴えにおいて、隣接地の所有者が他方の土地の一部を時効取得した場合であっても、両土地の所有者は依然として当事者適格を失わない。
問題の所在(論点)
隣接する土地の一部の所有権を隣接地の所有者が時効取得した場合に、当該土地所有者らは境界確定の訴えの当事者適格を失うか。
規範
境界確定の訴えにおける当事者適格は、誰に訴訟を追行させ、誰に対して本案判決をすることが必要かつ有意義かという観点から決すべきであり、相隣接する土地の各所有者がこれに該当する。また、隣接地の所有権取得を第三者に対抗するための登記手続(分筆等)の前提として境界確定が必要となる実益も考慮されるべきである。
重要事実
隣接する土地(甲地と乙地)の境界確定を求める訴訟において、乙地の所有者が甲地の一部を時効取得したと主張した。この場合、事実上、境界線の両側が同一所有者に帰属することになるため、境界確定を求める訴えの当事者適格(原告適格)が失われるのではないかが争われた。
あてはめ
甲地の一部を乙地の所有者が時効取得した場合でも、甲乙両地の所有者は「境界に争いがある隣接土地の所有者同士」という関係にあることに変わりはない。また、時効取得した土地を第三者に対抗するための登記を具備するには、取得範囲を特定するための分筆が必要であり、その前提として両土地の境界確定が不可欠である。したがって、両当事者に本案判決をすることは必要かつ有意義といえる。
結論
隣接土地の所有者が他方の土地の一部を時効取得した場合であっても、境界確定の訴えの当事者適格を失わない。
実務上の射程
境界確定の訴えが形式的形成訴訟であることを背景に、実体法上の所有権の帰属の変化が直ちに訴訟要件(当事者適格)を欠失させないことを示した。答案上は、所有権の存否を争う「所有権確認の訴え」との性質の違いを強調する際や、境界確定の訴えの利益・適格を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和57(オ)97 / 裁判年月日: 昭和58年10月18日 / 結論: 棄却
隣接する甲乙両地の各所有者間の境界確定訴訟において、甲地のうち右境界の一部に接続する部分につき乙地の所有者の時効取得が認められても、甲地の所有者は、右境界部分についても境界確定を求めることができる。
事件番号: 昭和57(オ)70 / 裁判年月日: 昭和58年9月30日 / 結論: 棄却
民法一六二条所定の取得時効の要件が具備された場合、当該不動産の占有者は、時効期間の経過後右不動産の占有を喪失しても、これが時効利益の放棄に該当しない限り、右時効の援用権者として、これを援用しうるものというべきである。