隣接土地所有者間に境界についての合意が成立したことのみによつて、右合意のとおりの境界を確定することは許されない。
境界についての当事者の合意と境界の確定
民法223条
判旨
相隣者間において境界を定めた事実があっても、それのみによって一筆の土地の境界(公法上の境界)自体が変動することはない。したがって、境界確定訴訟において当事者間の合意のみに依拠して境界を確定することは許されない。
問題の所在(論点)
境界確定訴訟(又は所有権確認の前提となる境界確定)において、当事者間に成立した境界に関する合意のみを根拠として境界を確定することができるか。公法上の境界の性質と合意の効力が問題となる。
規範
境界確定訴訟(境界確定の訴え)における境界とは、公法上の不動産登記法上の分筆・合筆の手続きによらなければ変動しない一筆の土地の範囲を画する線を指す。相隣者間での境界に関する合意は、所有権の範囲を定める私法上の合意としての性質は有するものの、公法上の境界を変動させる効力は持たない。よって、裁判所は当事者間の合意を一つの証拠資料として考慮することはできるが、当該合意に拘束されることなく、客観的な境界を確定しなければならない。
重要事実
上告人Aと被上告人らの間において、本件各土地の境界について合意が成立した事実があった。原審は、本件各所有権確認請求を審理する前提として土地の境界を確定するにあたり、上記合意の事実のみに依拠して境界を確定した。
あてはめ
原審は、本件各土地の境界確定にあたり、上告人と被上告人らとの間に境界に関する合意が成立したことのみを理由として境界を認定している。しかし、相隣者間で境界を定める合意があっても、それは私法上の所有権の範囲を画する合意にすぎず、公法上の一筆の土地の境界自体を変動させるものではない。したがって、かかる合意のみに依拠して客観的な境界を確定した原審の判断は、土地の境界の法的性質を誤解した違法がある。
結論
相隣者間の合意のみによって土地の境界を確定することは許されない。原判決を破棄し、更なる審理のため原審に差し戻す。
実務上の射程
境界確定訴訟が形式的形成訴訟であり、処分権主義の適用が制限される(当事者の主張や合意に拘束されない)ことを示す重要判例である。答案上は、当事者間の和解や合意がなされた場面において、それが「所有権の範囲」の合意(私法上の紛争解決)としては有効であっても、公法上の「境界(筆界)」を直接確定させるものではないことを論述する際に用いる。
事件番号: 平成9(オ)104 / 裁判年月日: 平成11年2月26日 / 結論: 棄却
甲地のうち、乙地との境界の全部に接続する部分を乙地所有者丙が、残部分を丁がそれぞれ譲り受けた場合において、甲乙両地の境界に争いがあり、これを確定することによって初めて丙及び丁がそれぞれ取得した土地の範囲の特定が可能になるという事実関係の下においては、丙及び丁は、甲乙両地の境界確定の訴えの当事者適格を有する。