愛知県議会の議員の定数並びに選挙区及び各選挙区の議員の数に関する条例(昭和三八年愛知県条例第二号)が、平成三年四月七日施行の愛知県議会議員選挙当時、南設楽郡、北設楽郡の二選挙区を特例選挙区として存置していたことは、憲法一四条一項九二条、九三条に違反するものとはいえない。
愛知県議会の議員の定数並びに選挙区及び各選挙区の議員の数に関する条例(昭和三八年愛知県条例第二号)におけるいわゆる特例選挙区の存置の合憲性
公職選挙法271条2項,愛知県議会の議員の定数並びに選挙区及び各選挙区の議員の数に関する条例(昭和38年愛知県条例第2号)2条,憲法14条1項,憲法92条,憲法93条
判旨
都道府県議会議員選挙における特例選挙区の設置や定数配分は、議会の合理的な裁量に委ねられるが、配当基数が0.5を著しく下回る場合などは、裁量権の限界を超えたものと推定される。本件では配当基数約0.31の特例選挙区存置による最大較差1対5.02の不平等も、地域間の均衡を図る等の諸要素に照らし、直ちに不合理とはいえず適法である。
問題の所在(論点)
1. 特例選挙区の存置が公選法271条2項の許容範囲内か(裁量権の逸脱の有無)。 2. 特例選挙区を含めた定数配分による投票価値の不平等が、公選法15条7項及び憲法14条1項等に照らして合理的裁量の限界を超えているか。
規範
1. 特例選挙区(公選法271条2項)の設置は、行政施策上の代表確保の必要性や合区の困難性等を総合判断する都道府県議会の裁量に委ねられる。ただし、配当基数(選挙区人口/議員1人あたり人口)が0.5を著しく下回る場合は、合理的裁量の限界を超えていると推定される。 2. 定数配分(15条7項)についても議会の裁量が認められるが、投票価値の不平等が、地域間の均衡等通常考慮し得る諸要素を斟酌してもなお一般的に合理性を有しない程度に達しているときは、裁量の限界を超え、正当化すべき特別の理由がない限り同項に違反する。
重要事実
1991年の愛知県議会議員選挙において、南設楽郡(配当基数0.316)と北設楽郡(同0.312)の2選挙区が特例選挙区として存置された。その結果、これら特例選挙区と他選挙区との間の最大人口較差は1対5.02に達し、逆転現象も22通り生じていた。当該2郡は広大な山間地で過疎化・高齢化が進み、産業構造の転換等の行政需要が高い地域であった。上告人らは、本件定数配分規定が公選法15条7項及び憲法14条等に違反すると主張して選挙無効を求めた。
あてはめ
1. 両郡は愛知県の面積の約20%を占める広大な山間地であり、過疎・高齢化対策等の独自の行政需要が存在する。配当基数約0.31は0.5を著しく下回るとまではいえず、地域代表確保の必要性から特例選挙区として存置した議会の判断は合理的裁量の範囲内として是認できる。 2. 特例選挙区を存置すれば、定数1が配分される結果、他選挙区との間で3倍を超える較差が生じるのは制度上必然である。本件の較差1対5.02は特例選挙区の存置に由来するものであり、地域間の均衡を図るために考慮し得る諸般の要素を斟酌すれば、一般的に合理性を有しない程度に達しているとはいえない。
結論
本件条例の定数配分規定は、都道府県議会に与えられた裁量権の合理的な行使として是認でき、公選法15条7項及び憲法14条等に違反しない。
実務上の射程
地方議会選挙における「特例選挙区」を伴う投票価値の平等に関するリーディングケースである。国政選挙の基準(1対2や1対3)をそのまま適用せず、特例選挙区制度の趣旨(地域代表性)を重視して、より広い議会裁量を認める判断枠組みとして答案で使用する。ただし、「0.5を著しく下回る」場合の裁量権逸脱推定という限定にも留意が必要である。
事件番号: 平成4(行ツ)94 / 裁判年月日: 平成5年10月22日 / 結論: 棄却
一 千葉県議会議員の選挙区等に関する条例(昭和四九年千葉県条例第五五号)が、平成三年四月七日施行の千葉県議会議員選挙当時、海上郡、匝瑳郡、勝浦市の三選挙区を特例選挙区として存置していたことは、適法である。 二 千葉県議会議員の選挙区等に関する条例(昭和四九年千葉県条例第五五号)の議員定数配分規定は、平成三年四月七日施行…