一 公職選挙法二七一条二項に基づくいわゆる特例選挙区の設置の適否は、当該都道府県の行政施策の遂行上当該地域から代表を確保する必要性隣接の郡市との合区の困難性の有無・程度等に照らし、当該都道府県全体の調和ある発展を図るなどの観点からする都道府県議会の判断力が裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決するほかはないところ、当該区域の人口が議員一人当たりの人口の半数を著しく下回る場合には、特例選挙区の設置を認める都道府県議会の判断は、合理的裁量の限界を超えているものと推定するのが相当である。 二 愛知県議会の議員の定数並びに選挙区及び各選挙区の議員の数に関する条例(昭和三八年愛知県条例第二号)が、平成三年四月七日施行の愛知県議会議員選挙当時、南設楽郡、北設楽郡の二選挙区を特例選挙区として存置していたことは、適法である。 三 愛知県議会の議員の定数並びに選挙区及び各選挙区の議員の数に関する条例(昭和三八年愛知県条例第二号)の議員定数配分規定は、平成三年四月七日施行の愛知県議会議員選挙当時、公職選挙法一五条七項に違反していたものとはいえない。 (一、三につき補足意見がある。)
一 公職選挙法二七一条二項に基づくいわゆる特例選挙区の設置と都道府県議会の裁量 二 愛知県議会の議員の定数並びに選挙区及び各選挙区の議員の数に関する条例(昭和三八年愛知県条例第二号)におけるいわゆる特例選挙区の存置の適法性 三 愛知県議会の議員の定数並びに選挙区及び各選挙区の議員の数に関する条例(昭和三八年愛知県条例第二号)の議員定数配分規定の適法性
愛知県議会の議員の定数並びに選挙区及び各選挙区の議員の数に関する条例(昭和38年愛知県条例第2号)2条,公職選挙法15条1項,公職選挙法15条2項,公職選挙法15条7項,公職選挙法271条2項
判旨
都道府県議会議員選挙の定数配分規定の適法性は、議会の合理的裁量の範囲内か否かによって決せられ、特例選挙区の設置については配当基数が0.5を著しく下回らない限り裁量権の行使として是認される。
問題の所在(論点)
都道府県議会議員選挙における特例選挙区の存置および定数配分規定が、公職選挙法15条7項および271条2項に照らし、議会の合理的裁量の範囲内として適法か。
規範
都道府県議会の議員定数配分は、人口比例を基本としつつも地域間の均衡を考慮する裁量が議会に認められる。特例選挙区(公選法271条2項)の設置は、行政施策上の代表確保の必要性や合区の困難性を総合判断すべき政策的判断事項であり、配当基数が0.5を著しく下回る場合を除き、議会の合理的裁量の限界を超えたものとは推定されない。また、定数配分規定が公選法15条7項に違反するかは、地域間の均衡を図るため通常考慮し得る諸般の要素を斟酌してもなお、一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に不平等が達しているか否かにより判断する。
重要事実
平成3年の愛知県議会議員選挙において、南設楽郡および北設楽郡が特例選挙区として存置され、それぞれ定数1が配分されていた。当時の配当基数は南設楽郡が約0.3116、北設楽郡が約0.3122であり、特例選挙区と他選挙区間の最大格差は1対5.02であった。原審は、配当基数が1対3を超える較差を生じさせる特例選挙区の存置は、特別の事情がない限り違法であるとして選挙を違法と判断したため、上告された。
あてはめ
まず特例選挙区について、両郡は山間地で過疎化・高齢化対策等の独自の行政需要があり、地域代表確保の必要性が認められる。配当基数は約0.31であり、0.5を「著しく下回る」とまではいえず、議会の判断が社会通念上著しく不合理とはいえない。次に定数配分全体について、最大格差1対5.02は適法な特例選挙区の存置に由来するものであり、これを除いた選挙区間の格差は1対2.89にとどまる。これらは地域間の均衡を図るための裁量権の行使として、一般的に合理性を欠く程度に達しているとはいえない。
結論
本件定数配分規定は議会の合理的裁量の範囲内にあり、公職選挙法に違反せず適法である。
実務上の射程
地方選挙における「1票の格差」訴訟において、議会の広い裁量を認めるリーディングケースである。特に特例選挙区については、衆議院選挙等の「1対3」といった一律の数値基準が直ちに妥当するわけではない点に注意を要する。
事件番号: 平成4(行ツ)94 / 裁判年月日: 平成5年10月22日 / 結論: 棄却
一 千葉県議会議員の選挙区等に関する条例(昭和四九年千葉県条例第五五号)が、平成三年四月七日施行の千葉県議会議員選挙当時、海上郡、匝瑳郡、勝浦市の三選挙区を特例選挙区として存置していたことは、適法である。 二 千葉県議会議員の選挙区等に関する条例(昭和四九年千葉県条例第五五号)の議員定数配分規定は、平成三年四月七日施行…