特許出願準備中の発明がこれを実施する装置を現認した者において容易にその内容を知ることができるものである場合に、右出願準備中の発明を実施する装置を他には販売しないとの約定の下に製造させる旨の契約を締結し、その後に特許請求の範囲が減縮されたときは、右契約による不作為義務の対象は減縮された範囲の発明を実施する装置となる。
特許出願準備中の発明を実施する装置を他には販売しないとの約定の下に製造させる旨の契約による不作為義務の対象がその後の特許請求の範囲の減縮により縮小するとされた事例
特許法17条の2,特許法33条,特許法78条
判旨
特許出願準備中の発明に関する独占的製造販売契約において、特許請求の範囲が補正により減縮された場合、特段の事情がない限り、契約上の義務の対象も減縮後の発明の範囲に限定される。
問題の所在(論点)
特許出願前に締結された独占的製造販売契約において、出願過程での補正により特許請求の範囲が減縮された場合、契約上の販売禁止義務の対象となる装置の範囲もこれに伴って減縮されるか。
規範
特許出願準備中の発明を実施した装置につき、受託者が委託者以外に納入販売しない旨の義務を負う契約は、将来特許権による独占権が与えられることを前提に、その発明の実施に当たる装置を対象として締結されたものと解すべきである。したがって、出願過程で特許請求の範囲が補正により減縮された場合には、特段の事情がない限り、契約上の義務の対象となる装置の範囲も、これに伴って減縮後の範囲に限定される。
重要事実
被上告人(委託者)は、掘削装置に関する発明(本願発明)につき特許出願を準備し、上告人(受託者)に対し当該装置を製造発注した。その際、上告人は当該装置を被上告人以外には販売しないとの合意をした。その後、被上告人は拒絶理由通知を受けて特許請求の範囲を減縮する補正を行い、限定された内容で特許登録を受けた(本件特許)。その後、上告人が第三者に販売した装置(被告装置)につき、被上告人が契約違反を理由に差止めと損害賠償を請求した。
あてはめ
本件のような掘削装置の発明は、工事での使用により第三者が容易にその内容を知り得るものである。特許による独占権が与えられない限り、他者の実施を阻止できない以上、特許取得を前提とせず契約当事者のみが永久に実施を禁ぜられるとするのは不合理である。本件において特段の事情は認められないため、契約の対象は本願発明の補正後の範囲、すなわち本件特許の技術的範囲に含まれる装置に限定されると解される。したがって、被告装置が本件特許の技術的範囲に含まれるか否かを検討せずに契約違反を認めた原審の判断は誤りである。
結論
本件契約の義務対象も特許請求の範囲の減縮に伴い限定される。被告装置が減縮後の技術的範囲に属するかを審理させるため、損害賠償請求部分につき原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
知財分野におけるライセンス契約や製造受託契約の解釈において、出願中の技術を対象とする場合の規範となる。契約書に「出願が拒絶された場合や減縮された場合」の取扱いを明記していない場合の補充的解釈として機能する。ただし、「特段の事情」がある場合には契約独自の範囲が認められる余地を残している。
事件番号: 平成4(オ)364 / 裁判年月日: 平成5年10月19日
【結論(判旨の要点)】特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の確定について、出願過程等において特許権者が構成を制限したなどの特段の事情がない限り、明細書等の記載に基づいて客観的に画定されるべきである。 第1 事案の概要:特許権者(原告)は、インゴットの取付け位置に関する発明について特許権を有していた。被告が製造販売…
事件番号: 平成10(行ツ)81 / 裁判年月日: 平成11年4月22日
【結論(判旨の要点)】特許法17条の2第5項2号所定の「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に、新たな技術的事項を付加する補正が含まれる場合、当該補正は同号に適合せず不適法である。かかる補正を含む却下決定後の審決に対しては、補正の不適法を理由として取消しを求めることができる。 第1 事案の概要:本件発明は、特定のロー…