借地法一二条一項の規定により賃料額の増減が請求できる事情の変更には、賃料額決定の重要な要素となっていた当事者間の個人的な事情の変更も、含まれる。
当事者間の個人的な事情の変更と借地法一二条一項の規定による賃料額の増減の請求の可否
借地法12条1項
判旨
借地法12条1項の賃料増減請求権の根拠となる「事情の変更」には、一般的な経済的事情のみならず、当初の賃料決定の重要な要素となった当事者間の個人的な事情の変更も含まれる。
問題の所在(論点)
借地法12条1項(現・借地借家法11条1項)に規定される賃料不相当の判断基準となる「事情の変更」に、一般的な経済情勢の変化以外の「当事者間の個人的事情」の変化が含まれるか。
規範
借地法12条1項(現・借地借家法11条1項)に基づく賃料増減請求が認められるための「事情の変更」とは、条文が明示する一般的な経済的事情に限られない。当事者間の個人的な事情であっても、当事者が当初の賃料額決定の際にこれを考慮し、賃料額決定の重要な要素となったものであれば、その後の変更により当初の賃料額が不相当となった場合に同条の適用が認められる。
重要事実
賃貸人(上告人)と賃借人(被上告人)は、当初、代表者を同じくする関連会社同士であった。このような特殊な人的関係に基づき、被上告人が上告人を金銭的に援助する意図から、客観的な適正賃料を大幅に超える高額な賃料が約定された。しかし、その後の時の経過により、両社間の特別な関係は解消され、当初の個人的な事情が変更するに至った。
事件番号: 平成18(受)192 / 裁判年月日: 平成20年2月29日 / 結論: 破棄差戻
賃料自動改定特約のある建物賃貸借契約の賃借人から借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求がされた場合において,当該請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たり,上記特約による改定前に賃貸借契約の当事者が現実に合意した直近の賃料を基にして,その合意された日から当該請求の日までの間の経済事情の変動等を考慮しなければなら…
あてはめ
本件では、当初の高額賃料は、両社が代表者を共通にするという個人的事情に基づき、援助目的で決定されたものであり、賃料額決定の重要な要素となっていたといえる。その後、両社間に特別な関係がない状況へと変化したことは、賃料額決定の前提となった重要な個人的事情の変更に該当する。したがって、当初の賃料額が客観的に不相当となった以上、被上告人による賃料減額請求は認められるべきである。
結論
個人的な事情の変更を理由とする賃料減額請求は認められる。本件上告を棄却する。
実務上の射程
借地借家法11条1項の「租税その他の公課の増減」「土地の価格の騰落その他の経済事情の変動」「近傍類似の土地の借賃との比較」という例示列挙以外の事情も考慮できることを明示した判例であり、親族間やグループ会社間での特殊な合意がある事案での規範として活用できる。
事件番号: 平成14(受)1954 / 裁判年月日: 平成17年3月10日 / 結論: 破棄差戻
賃借人の要望に沿って大型スーパーストアの店舗として使用するために建築され,他の用途に転用することが困難である建物について,賃貸人が将来にわたり安定した賃料収入を得ること等を目的として,3年ごとに賃料を増額する旨の特約を付した賃貸借契約が締結された場合において,賃料減額請求の当否を判断するに当たり,当初の合意賃料を維持す…
事件番号: 平成15(受)869 / 裁判年月日: 平成16年11月8日 / 結論: 破棄差戻
1 不動産賃貸業等を営む甲が,乙が建築した建物で転貸事業を行うため,乙との間で,あらかじめ賃料額及びその改定等について協定を締結し,これに基づき,乙からその建物を一括して賃料自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容として締結した契約(いわゆるサブリース契約)についても,借地借家法32条1項の規定が適用される。 2 …
事件番号: 平成12(受)573 / 裁判年月日: 平成15年10月21日 / 結論: 破棄差戻
1 不動産賃貸業等を営む甲が,乙が建築した建物で転貸事業を行うため,乙との間であらかじめ賃料額,その改定等についての協議を調え,その結果に基づき,乙からその建物を一括して賃料自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)についても,借地借家法32条1項の規定が適用される。 2 不動産賃…
事件番号: 平成14(受)852 / 裁判年月日: 平成15年10月23日 / 結論: その他
1 不動産賃貸業等を営む甲が,乙が建築した建物で転貸事業を行うため,乙との間であらかじめ一定期間の賃料保証等についての合意をし,これに基づき,乙からその建物を一括して賃料保証特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)についても,借地借家法32条1項の規定が適用される。 2 不動産賃貸業等を…