建築基準法四二条二項の指定により同条一項の道路とみなされている土地上にブロック塀が設置された場合において、右ブロック塀の設置により既存の通路の幅員が狭められた範囲がブロック二枚分の幅にとどまり、右ブロック塀の外側に既存の通路があって、日常生活上支障が生じていないときは、隣接地の地上建物の所有者は、人格権が侵害されたことを理由として右ブロック塀の収去を求めることができない。
建築基準法四二条二項の指定により同条一項の道路とみなされている土地上に設置されたブロック塀の収去請求が許されないとされた事例
建築基準法42条1項,建築基準法42条2項,民法198条,民法710条
判旨
建築基準法上の道路指定を受けた土地内に建築制限違反の工作物が設置されても、直ちに隣地所有者に私法上の収去請求権は認められないが、日常生活に支障が生じ人格的利益が侵害されたといえる特段の事情があれば、人格権としての自由権に基づき排除請求が可能となる。
問題の所在(論点)
建築基準法42条2項の指定を受けた土地において、私人が法44条1項違反の工作物を設置した場合、隣地居住者は人格権に基づき当該工作物の収去を請求できるか。
規範
建築基準法42条2項の指定(みなし道路)を受けた土地の通行等の利用は、原則として行政上の制限による反射的利益にすぎない。しかし、特定の私人において、当該土地を通行等に利用することが日常生活に不可欠であり、これらが妨害されることで、生命、健康、財産の保護を全うできないほどの人格的利益の侵害が認められる場合には、人格権としての自由権に基づき、私法上の妨害排除・予防請求が認められる。
重要事実
上告人(被告)は、建築基準法42条2項により道路とみなされる「本件道路指定土地」内に、特定行政庁の工事停止命令に反して、境界線に沿ったブロック塀を設置した。隣地居住者である被上告人(原告)は、これが建築制限に違反し人格権を侵害するとして、ブロック塀の収去を求めて提訴した。なお、本件ブロック塀により既存通路の幅員が狭まったのはブロック2枚分程度であり、塀の外側には公道に通ずる約3メートルの通路が別途存在していた。
あてはめ
本件において、上告人が塀を設置した土地部分は、現実に道路として開設されておらず、被上告人が過去に通行していた事実もない。したがって、当該部分を自由に通行し得るという反射的利益さえ生じていない。また、本件ブロック塀の設置により狭められた幅員は極めて僅かであり、かつ南側には公道に通ずる十分な幅員の通路が存在している。そうであれば、被上告人の日常生活に具体的な支障が生じたとはいえず、人格的利益が侵害されたと解することは困難である。したがって、私法上の保護に値する権利侵害は認められない。
結論
被上告人の人格権(自由権)に基づく本件ブロック塀の収去請求は認められない。
実務上の射程
行政法規(建築基準法)違反の事実があるだけでは私法上の請求は認められないとする、公法と私法の峻別を示す判例である。答案上は、人格権に基づく妨害排除請求の可否を検討する際、具体的支障の有無(日常生活への不可欠性)という評価軸で、反射的利益に留まるか、私法上の保護に値する利益に昇華しているかを論じる際に活用すべきである。
事件番号: 昭和29(オ)72 / 裁判年月日: 昭和29年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が形式上は正当なものであっても、具体的諸事情の下で社会観念上、権利の濫用(民法1条3項)と認められる場合には、その行使は許されない。本件では原審の認定に基づき、被上告人の請求が権利の濫用に当たらないとした判断が支持された。 第1 事案の概要:本件判決文の記述からは具体的な事案の詳細は不明…
事件番号: 平成15(受)1886 / 裁判年月日: 平成18年3月23日 / 結論: 破棄差戻
被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして同土地周辺の建物所有者である原告らが提起した人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において,被告が同土地がみなし道路であることを否定することは,被告が,建物を建築するに際し,同土地がみなし道路であることを前提に建築確認…