一 建築基準法四二条二項の規定による指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する。 二 建築基準法四二条二項の規定による指定を受け現実に開設されている道路にその敷地所有者が自動車の通行の妨げとなる金属製ポールを設置した場合において、右道路が専ら徒歩又は二輪車による通行に供されてきた未舗装のものであり、右道路に接する土地の所有者は、同土地を利用しておらず、賃貸駐車場として利用する目的で右ポールの撤去を求めているにすぎないなど判示の事実関係の下においては、同土地の所有者は、右道路を自動車で通行することについて日常生活上不可欠の利益を有しているとはいえず、敷地所有者に対して人格権的権利に基づき右ポールの撤去を求めることはできない。
一 いわゆるみなし道路の通行妨害と妨害排除請求権 二 いわゆるみなし道路に接する土地の所有者から右道路の敷地所有者に対する同人により右道路内に設置された金属製ポールの撤去請求が認められないとされた事例
民法1条ノ2,民法198条,民法199条,建築基準法42条2項
判旨
建築基準法上の道路通行について、日常生活上不可欠の利益を有する者は、特段の事情のない限り、敷地所有者に対して人格権的権利に基づき妨害排除・予防を請求できるが、自動車通行の必要性が低く駐車場利用目的であれば、当該利益は認められない。
問題の所在(論点)
建築基準法42条2項の指定道路の通行において、単に賃貸駐車場として利用する目的で自動車通行を求める者に、人格権的権利に基づく妨害排除請求が認められるか。
規範
建築基準法42条2項の規定による指定を受け、現実に開設されている道路を通行することについて、日常生活上不可欠の利益を有する者は、敷地所有者に対して、右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する。ただし、敷地所有者が通行を受忍することによって、通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情がある場合はこの限りではない。
重要事実
上告人らが所有する私道(本件私道)は建築基準法42条2項の指定道路であり、被上告人らの土地の唯一の接道であった。従前、本件私道は主に徒歩・二輪車で利用され、自動車の通行は工事期間中の例外的なものに限られていた。被上告人らは相続した建物を解体して更地にした後、当該土地を賃貸駐車場として利用する目的で、上告人らが設置した自動車通行を妨げるポール(本件ポール)の撤去を求めた。
あてはめ
本件私道は専ら徒歩または二輪車の通行に供されてきた未舗装の道路であり、過去の例外的な工事車両の通行を除き、自動車が常用されていた事実は認められない。被上告人らは現在当該土地を居住用に利用しておらず、単に賃貸駐車場として利用する目的でポールの撤去を求めているにすぎない。このような状況下では、被上告人らが本件私道を「自動車で」通行することについて、日常生活上不可欠の利益を有しているとはいえない。
結論
被上告人らの人格権的権利は侵害されておらず、本件ポールの撤去請求は認められない。
実務上の射程
建築基準法上の道路(42条1項5号や2項)における通行利益を「人格権的権利」として構成した重要判例である。答案上は「日常生活上不可欠の利益」の有無が判断の分水嶺となり、居住の必要性がある場合は肯定されやすく、単なる営利目的や利便性向上の場合は否定されやすいという区別で用いる。
事件番号: 平成1(オ)1792 / 裁判年月日: 平成5年11月26日 / 結論: 破棄自判
建築基準法四二条二項の指定により同条一項の道路とみなされている土地上にブロック塀が設置された場合において、右ブロック塀の設置により既存の通路の幅員が狭められた範囲がブロック二枚分の幅にとどまり、右ブロック塀の外側に既存の通路があって、日常生活上支障が生じていないときは、隣接地の地上建物の所有者は、人格権が侵害されたこと…
事件番号: 昭和39(オ)1002 / 裁判年月日: 昭和41年9月22日 / 結論: 棄却
町が私道に設置した排水用土管の撤去を求める私道所有者の請求は、同人になんらの利益をもたらさない場合には、権利の濫用として許されない。
事件番号: 平成15(受)1886 / 裁判年月日: 平成18年3月23日 / 結論: 破棄差戻
被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして同土地周辺の建物所有者である原告らが提起した人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において,被告が同土地がみなし道路であることを否定することは,被告が,建物を建築するに際し,同土地がみなし道路であることを前提に建築確認…