建築基準法四二条一項五号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する。
いわゆる位置指定道路の通行妨害と妨害排除請求権
民法1条ノ2,民法198条,民法199条,建築基準法42条1項5号
判旨
建築基準法上の道路位置指定を受け現実に開設されている道路を、日常生活上不可欠なものとして通行する者は、敷地所有者が通行利益を上回る著しい損害を被る等の特段の事情がない限り、人格権的権利に基づき妨害排除・禁止を請求できる。
問題の所在(論点)
建築基準法42条1項5号の道路位置指定を受けた道路において、通行者が所有者に対して、通行を妨害する行為の排除や禁止を求める私法上の権利が認められるか、その要件が問題となる。
規範
道路位置指定を受け現実に開設されている道路の通行は、原則として反射的利益にすぎない。しかし、外部との交通についての代替手段を欠くなど、日常生活上不可欠なものとなった通行利益は、人格権的権利として私法上保護に値する。したがって、通行者が右利益を有する場合には、敷地所有者が通行受忍により通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情がない限り、通行者は所有者に対し、妨害行為の排除及び将来の妨害禁止を求めることができる。
重要事実
本件土地は、昭和33年に道路位置指定を受けた幅員4メートルの道路であり、30年以上にわたり近隣住民の通行に供されてきた。被上告人らは自動車を利用するが、公道に至る他の経路は階段状であり、自動車通行が可能な代替路が存在しなかった。これに対し、本件土地を取得した上告人らは、通行契約の締結を強要する意図で簡易ゲートを設置し、将来的に通行を不可能にする工事を予告するなどして、被上告人らの自動車通行を妨害した。
あてはめ
被上告人らは本件土地を長年自動車で通行しており、他に自動車通行が可能な公道への代替路が存在しない以上、本件土地を自動車で通行することについて「日常生活上不可欠の利益」を有しているといえる。一方、上告人らによる簡易ゲートの設置等は通行を現実に妨害し、将来の妨害も予測させるものである。また、上告人らにおいて、通行を容認することによって被上告人らの通行利益を上回るほどの「著しい損害を被るなどの特段の事情」は認められない。
結論
被上告人らは、人格権的権利に基づき、上告人らに対して本件土地の通行妨害行為の排除及び将来の通行妨害行為の禁止を求めることができる。
実務上の射程
公法上の規制に由来する反射的利益を、一定の要件(日常生活上の不可欠性)のもとで人格権的な私法上の権利として昇華させた判例である。答案上は、建築基準法上の道路における通行妨害の事案において、囲繞地通行権(民法210条)が成立しない場合や、より強力な差止請求を構成する際の有力な規範となる。
事件番号: 平成15(受)1590 / 裁判年月日: 平成17年3月29日 / 結論: その他
宅地分譲に際し分譲業者が公道から各分譲地に至る通路として開設した土地の幅員全部につき,分譲業者と宅地の分譲を受けた者との間の合意に基づいて自動車による通行を目的とする通行地役権が設定されたこと,同土地の現況が舗装されたいわゆる位置指定道路であり,通路以外の利用が考えられないことなど判示の事情の下においては,上記地役権の…
事件番号: 平成17(受)1208 / 裁判年月日: 平成18年3月16日 / 結論: その他
自動車による通行を前提とする民法210条1項所定の通行権の成否及びその具体的内容は,公道に至るため他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,上記通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。
事件番号: 平成8(オ)539 / 裁判年月日: 平成11年7月13日 / 結論: その他
公道に一・四五メートル接する甲土地の上に建築基準法が施行されるよりも前から存在した建築物が老朽化したために取り壊されたが、その当時、甲土地に隣接し右公道に接する乙土地は同法の規定が適用される建築物の敷地とされていたなど判示の事実関係の下においては、甲土地の所有者のために、乙土地について、同法四三条一項本文所定のいわゆる…