宅地分譲に際し分譲業者が公道から各分譲地に至る通路として開設した土地の幅員全部につき,分譲業者と宅地の分譲を受けた者との間の合意に基づいて自動車による通行を目的とする通行地役権が設定されたこと,同土地の現況が舗装されたいわゆる位置指定道路であり,通路以外の利用が考えられないことなど判示の事情の下においては,上記地役権の内容は,通行の目的の限度において,同土地全体を自由に使用できるというものであって,地役権者は,同土地に車両を恒常的に駐車させている者に対し,残余の幅員が3m余りあるとしても,そのような行為により車両の通行を妨害することの禁止を求めることができる。
通行地役権者が承役地の一部に車両を恒常的に駐車させている者に対しその禁止を求めることができるとされた事例
民法280条
判旨
通行地役権の内容が土地全体を自由に使用できるものである場合、車両を恒常的に駐車させ土地の一部を独占的に使用する行為は、残余の幅員で通行可能であっても地役権侵害にあたり、妨害排除・予防請求が認められる。
問題の所在(論点)
通行地役権の目的となっている土地の一部に車両を恒常的に駐車させる行為が、物理的に通行が可能であっても地役権の侵害(妨害)にあたるか。また、地役権に基づき「道路の目的外使用一般」の禁止を請求できるか。
規範
通行地役権の内容が、承役地の幅員全部につき自由に使用できるというものである場合、承役地の一部を恒常的・独占的に使用する行為は、地役権者がその部分を通行することを妨げるものとして、地役権の侵害にあたる。地役権者は、地役権に基づく妨害排除または妨害予防請求権として、当該行為の禁止を求めることができる。ただし、その範囲は通行妨害行為の禁止に限られ、目的外使用一般の禁止までは認められない。
重要事実
上告人は、幅員2.8m未満、積載量2.5t以下の車両の通行を目的とし、隣接する通路状土地(本件通路土地)の幅員全部を対象とする通行地役権を承継取得した。本件通路土地は舗装された位置指定道路であり、自治会が所有し、駐車が禁止されていた。被上告人は、自己の敷地に駐車スペースが不足していたため、本件通路土地の一部に自己の車両を恒常的に駐車させた。駐車後の残余幅員は約3mあり、地役権で想定された車両の通行自体は物理的に可能な状態であった。
あてはめ
本件地役権は、分譲時の合意や土地の現況(位置指定道路)、所有権の経緯(自治会への移転)から、通行目的の限度で土地全体を自由に使用できる内容と解される。被上告人が車両を恒常的に駐車させることは、土地の一部を独占的に使用するものであり、上告人がその部分を通行することを妨げているといえる。残余の幅員が3m余りあり通行が可能であるとしても、特段の制約がない限り土地全体の通行権が保障されるべきであり、侵害の事実は否定されない。もっとも、地役権は通行目的の範囲内の権利にすぎないため、通行妨害の禁止を超える「目的外使用一般の禁止」までは認められない。
結論
被上告人に対し、車両を恒常的に駐車させて上告人の車両通行を妨害することの禁止を求める限度で請求を認容する。その余の目的外使用禁止請求については棄却する。
実務上の射程
通行地役権の妨害排除請求の可否を検討する際のリーディングケース。権利の対象が「幅員全部」と認められる場合、物理的に通行可能か否か(=現実的な支障の有無)に関わらず、一部の独占的占有をもって侵害とみなす判断枠組みを示している。答案では、地役権の内容を認定した上で、妨害の態様が「独占的・恒常的」であることを指摘する際に用いる。
事件番号: 平成14(受)133 / 裁判年月日: 平成18年2月21日 / 結論: 破棄差戻
地方公共団体が,道路を一般交通の用に供するために管理しており,その管理の内容,態様によれば,社会通念上,当該道路が当該地方公共団体の事実的支配に属するものというべき客観的関係にあると認められる場合には,当該地方公共団体は,道路法上の道路管理権を有するか否かにかかわらず,当該道路を構成する敷地について占有権を有する。