地方公共団体が,道路を一般交通の用に供するために管理しており,その管理の内容,態様によれば,社会通念上,当該道路が当該地方公共団体の事実的支配に属するものというべき客観的関係にあると認められる場合には,当該地方公共団体は,道路法上の道路管理権を有するか否かにかかわらず,当該道路を構成する敷地について占有権を有する。
道路を一般交通の用に供するために管理している地方公共団体が当該道路を構成する敷地について占有権を有する場合
民法180条,民法199条
判旨
道路管理者が、道路を一般交通の用に供するために管理しており、その内容・態様が社会通念上、当該道路が当該管理者の事実的支配に属すると認められる客観的関係にある場合には、道路法上の権限の有無にかかわらず占有権が認められる。
問題の所在(論点)
道路管理者が、道路法上の道路管理権を行使して現に道路を管理している場合に、道路法上の権限とは別個に、民法180条の「所持」および「自己のためにする意思」が認められ、敷地に対する占有権(占有訴権の基礎)を取得できるか。
規範
占有権の取得原因たる「所持」(民法180条)とは、社会通念上、その物がその人の事実的支配に属するものというべき客観的関係にあることを指す。地方公共団体が道路を管理しており、その管理の内容・態様から、社会通念上当該道路が当該地方公共団体の事実的支配に属すると認められる場合には、道路法上の道路管理権の有無にかかわらず、「自己のためにする意思をもって」当該道路を所持しているものといえ、当該道路敷地について占有権を有する。
重要事実
本件道路(市道)は駅前と県道を結ぶ交通量の多い道路である。道路管理者である上告人(市)は、国から敷地の無償貸付けを受け、昭和42年以降、道路台帳の調製、度重なる道路舗装・補修工事の実施、電線埋設等の占用許可の付与、不法占拠者に対する監督処分や行政代執行等の管理行為を継続的に行ってきた。これに対し、登記名義人から所有権移転登記を受けた被上告人らが、所有権を主張して買取り等を要求し、交通妨害行為を行ったため、上告人が占有の妨害の予防(民法199条)を求めて提訴した。
あてはめ
上告人は、昭和42年以降、道路台帳の保管、補修工事の実施、占用の許可、さらには監督処分や代執行といった、公法上の権限に基づく多岐にわたる管理行為を行っている。これらの管理の態様は、単なる事後的・補助的な関与にとどまらず、当該道路を排他的・包括的に支配するものである。このような実態があれば、社会通念上、本件道路敷地を事実的に支配しているというべき客観的関係(所持)があり、かつ道路管理者として道路を維持・運営する意思は「自己のためにする意思」に該当すると評価される。
結論
上告人が主張する態様で道路を管理している事実が認められるならば、上告人は本件道路敷地について占有権を有する。したがって、道路管理権の行使のみでは占有権の根拠にならないとした原審の判断は誤りであり、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
行政主体による公物(道路等)の管理が、民法上の占有権として保護され得ることを明示した。答案上、公道上の妨害排除・予防請求が問題となる場面で、行政主体が私法上の占有権に基づき請求を行うための論理構成として活用できる。特に「道路管理権=公法上の権限」と「占有権=私法上の権利」を峻別しつつ、管理の実態から占有を肯定する点がポイントとなる。
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