町が私道に設置した排水用土管の撤去を求める私道所有者の請求は、同人になんらの利益をもたらさない場合には、権利の濫用として許されない。
権利濫用にあたる一事例
民法1条
判旨
道路工事の撤去を求める所有権に基づく請求であっても、諸般の事情に照らし、その行使が社会通念上容認される限度を超える場合には、権利の乱用として許されない。
問題の所在(論点)
土地所有者が、自己の所有地上の工作物の撤去を求める所有権に基づく妨害排除請求権を行使することが、民法1条3項の権利の乱用として否定されるか。
規範
民法1条3項の権利の乱用は、権利の行使が外形的には適法であっても、その目的、態様、およびその行使によって権利者が得る利益と相手方が受ける不利益との権衡等を総合的に考慮し、社会通念上容認される限度を超える場合に認められる。
重要事実
上告人は、自己の所有地である「乙道路」上に設置された工事の撤去を求めた。原審において確定された事実関係によれば、当該撤去請求を認めることにより上告人が得られる利益に比して、相手方や社会が被る不利益が極めて大きく、請求の態様等に照らしても妥当性を欠く状況にあった(具体的な事情の詳細は判決文からは不明)。
あてはめ
本件乙道路における工事の撤去を求める請求について、原審が確定した事実関係に基づけば、上告人の請求は権利の行使によって得られる利益と失われる利益との間の均衡を著しく欠くものである。したがって、かかる請求は所有権の本来の目的を逸脱し、社会通念上許容される範囲を超えたものと評価されるため、権利の乱用に該当すると判断される。
結論
本件工事の撤去を求める請求は権利の乱用にあたり、認められない。
実務上の射程
所有権という強力な物権的請求権であっても、具体的な不利益の対比や公共性の観点から権利の乱用が成立し得ることを示す。答案作成上は、宇奈月温泉事件等のリーディングケースと同様に、利益衡量(権利者が受ける利益と相手方が受ける不利益の比較)の枠組みで論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和62(オ)741 / 裁判年月日: 平成3年4月19日 / 結論: 破棄自判
道路位置指定処分がされたが現実に道路として開設されていない土地上に工作物が設置されている場合において、隣接地の所有者は、右処分がされた土地を自由に通行し得ることを前提として、右工作物の撤去を求めることができない。
事件番号: 昭和29(オ)72 / 裁判年月日: 昭和29年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が形式上は正当なものであっても、具体的諸事情の下で社会観念上、権利の濫用(民法1条3項)と認められる場合には、その行使は許されない。本件では原審の認定に基づき、被上告人の請求が権利の濫用に当たらないとした判断が支持された。 第1 事案の概要:本件判決文の記述からは具体的な事案の詳細は不明…
事件番号: 昭和34(オ)759 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の濫用(民法1条3項)の成否は、原審が確定した事実に即して判断されるべきであり、権利行使が正当な範囲を逸脱していると認められない限り、その請求は容認される。 第1 事案の概要:本判決文からは具体的な事案の詳細は不明であるが、上告人が被上告人の請求に対し、民法1条に違反する権利の濫用であると主張…