被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして同土地周辺の建物所有者である原告らが提起した人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において,被告が同土地がみなし道路であることを否定することは,被告が,建物を建築するに際し,同土地がみなし道路であることを前提に建築確認を得,同土地に幅員4mの道路を開設し,その後5年以上同土地がみなし道路であることを前提に建物を所有してきた上,同土地は公衆用道路として非課税とされているという事実関係の下では,信義則上許されない。
被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において被告が同土地がみなし道路であることを否定することは信義則上許されないとされた事例
民法1条2項,民法2条,民法198条,民訴法2条,建築基準法42条2項,憲法13条
判旨
建築基準法42条2項所定の道路(2項道路)であることを前提に建築確認を得て建物を建築・所有し、当該土地が公衆用道路として非課税とされている者が、後になって周辺住民に対し当該道路が2項道路であることを否定する主張をすることは、信義則上許されない。
問題の所在(論点)
自ら2項道路であることを前提に建築確認を得て建物を所有し、公衆用道路として非課税の恩恵を受けている者が、後日、近隣住民に対して当該道路の2項道路該当性を否定する主張を行うことが、信義則(民法1条2項)に反するか。
規範
建築基準法の接道義務(43条1項、42条)の趣旨は、敷地が幅員4m以上の道路に接することを義務づけ、建物や居住者の避難、通行、防火上の安全等を確保し、ひいては周辺の建物や居住者の安全等にも寄与することにある。この趣旨に照らし、自ら2項道路であることを前提に建築確認を得て道路を整備し、公衆用道路として非課税措置を受ける等の利益を享受しながら、周辺建物所有者との関係において当該道路の2項道路該当性を否定することは、信義則(民法1条2項)上許されない。
重要事実
Xらは、本件通路を2項道路とする前提で建築確認を得て建物を所有していた。Yらも、平成6年頃に自ら本件土地を含む本件通路が2項道路であることを前提に建築確認を得て自宅を新築し、本件土地を幅員4mの道路として整備した。本件土地は公衆用道路として非課税とされていた。しかし、Yらは平成11年頃、Xらの通行を妨げるために本件土地にタイヤ止めやブロック塀を設置し、訴訟において、本件通路は基準時に2項道路の要件を満たしていなかったと主張して、その該当性を否定した。
あてはめ
Yらは、自ら本件通路を2項道路として建築確認を得て建物を新築・所有し、5年以上にわたりその状態を維持してきた。本件土地は公衆用道路として非課税とされており、Yらはその公的な利益を享受している。建築基準法の接道義務の趣旨は周辺住民の安全確保にもあることから、Yらが自らの利便のために道路として利用・申請しておきながら、Xらとの関係でその法的性質を否定することは、周辺建物所有者との関係において「著しく正義に反する」といえる。したがって、Yらによる2項道路該当性の否定は、先行行為と矛盾する挙動であり、信義則上許されない。
結論
被告(Yら)が本件道路の2項道路該当性を否定する主張をすることは、信義則上許されず、2項道路であることを前提とした通行の自由(人格権)に基づく妨害排除請求の成否を審理すべきであるとして、原判決を破棄し差し戻した。
実務上の射程
2項道路の該当性が不明確な事案において、客観的な指定要件(基準時の現況)の立証が困難であっても、相手方の過去の建築確認申請や課税状況等の事情から、信義則による主張制限を導く際の有力な根拠となる。ただし、本判決はあくまで主張の制限(クリーンハンズ的な法理)を述べるものであり、直ちに人格権に基づく妨害排除請求を認容したものではない点に注意を要する。
事件番号: 昭和62(オ)741 / 裁判年月日: 平成3年4月19日 / 結論: 破棄自判
道路位置指定処分がされたが現実に道路として開設されていない土地上に工作物が設置されている場合において、隣接地の所有者は、右処分がされた土地を自由に通行し得ることを前提として、右工作物の撤去を求めることができない。
事件番号: 昭和36(オ)629 / 裁判年月日: 昭和37年2月15日 / 結論: 棄却
第一審判決が確認の利益のないことをもつて訴を不適法として却下したが、仮定的に本案について認定判断をも判示している場合において、控訴審が確認の利益があり訴は適法であるけれども請求は理由がないと判断するときには、控訴審として、民訴法第三八八条により事件を第一審に差し戻さなくてもよい。