第一審判決が確認の利益のないことをもつて訴を不適法として却下したが、仮定的に本案について認定判断をも判示している場合において、控訴審が確認の利益があり訴は適法であるけれども請求は理由がないと判断するときには、控訴審として、民訴法第三八八条により事件を第一審に差し戻さなくてもよい。
訴を不適法として却下した第一審判決が仮定的に本案について認定判断をも示している場合と民訴法第三八八条の適用
民訴法388条
判旨
第一審が訴えを不適法として却下しながら同時に本案判断(予備的棄却)を行っている場合、控訴審が訴えを適法と判断しても、民事訴訟法388条による差し戻しをせずに自ら本案判決を行うことができる。
問題の所在(論点)
第一審が訴えを不適法として却下しつつ予備的に本案判断を行っている場合において、控訴審が訴えを適法と判断した際に、民事訴訟法388条(旧民訴法388条)に基づき必ず第一審に差し戻さなければならないか。
規範
第一審裁判所が、訴えを不適法として却下しつつ、同時に仮定的に本案の認定を行い請求を棄却している場合には、控訴審が訴えを適法と判断した際、民事訴訟法388条(第一審判決の取消し及び差し戻し)の規定にかかわらず、事件を第一審に差し戻すことなく自ら本案判決を下しても差し支えない。
重要事実
上告人は、道路供用廃止処分の無効確認等を求めて提訴した。第一審判決は、本件訴えを訴訟要件を欠く不適法なものとして却下したが、同時に「仮に訴えが適法であるとしても理由がない」として仮定的な本案の認定を行い、請求を棄却する内容を含んでいた。これに対し、控訴審(原審)は、確認の利益があり訴えは適法であると判断したが、本案については請求に理由がないとして差し戻しを行わずに控訴を棄却した。上告人は、訴えを適法とする以上、第一審に差し戻すべきであるとして上告した。
あてはめ
第一審において、形式上は却下判決であっても、実質的には本案についての認定・判断が示され、請求棄却の結論が導かれている。このような場合、控訴審が訴訟要件を具備していると判断したとしても、既に第一審で審理が尽くされ本案判断がなされている以上、審級の利益を損なうことはない。したがって、民事訴訟法388条が定める原則的な差し戻しの必要性は認められず、控訴審が自ら判断を行うことは正当として是認される。
結論
本件訴えを適法と解しながら、第一審に差し戻さずに本案の請求を理由がないとした原判決の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
第一審が却下判決と同時に予備的な本案判断を行っている「特殊な判決」に関する射程である。答案上は、訴訟要件の存否が争点となる事案で、第一審が本案判断にまで踏み込んでいる場合の控訴審の処理(差戻しの要否)を検討する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和62(行ツ)49 / 裁判年月日: 昭和62年11月24日 / 結論: 棄却
里道の近くに居住し、その通行による利便を享受することができる者であつても、当該里道の用途廃止により各方面への交通が妨げられるなどその生活に著しい支障が生ずるような特段の事情があるといえないときは、右用途廃止処分の取消しを求めるにつき原告適格を有しない。
事件番号: 昭和41(行ツ)34 / 裁判年月日: 昭和47年7月25日 / 結論: 破棄差戻
一、建築基準法四二条一項五号により位置の指定を受けた道路の廃止処分につき、敷地の所有者の承諾がなかつたとしても、右所有者において道路が従前よりは狭くなる程度のことを承知のうえで廃止申請書添付の図面に押印したという判示の事情があるときは、その承諾の欠缺が申請関係書類上明白であるのにこれを看過してされたというような特別の場…
事件番号: 平成15(受)1886 / 裁判年月日: 平成18年3月23日 / 結論: 破棄差戻
被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして同土地周辺の建物所有者である原告らが提起した人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において,被告が同土地がみなし道路であることを否定することは,被告が,建物を建築するに際し,同土地がみなし道路であることを前提に建築確認…