一、建築基準法四二条一項五号により位置の指定を受けた道路の廃止処分につき、敷地の所有者の承諾がなかつたとしても、右所有者において道路が従前よりは狭くなる程度のことを承知のうえで廃止申請書添付の図面に押印したという判示の事情があるときは、その承諾の欠缺が申請関係書類上明白であるのにこれを看過してされたというような特別の場合を除き、右廃止処分を当然無効とすることはできない。 二、道路位置廃止処分が、これにより一部土地が袋地となる点において建築基準法(昭和三四年法律第一五六号による改正前のもの)四三条一項違反の結果を生ずることを看過してされた場合においても、その後の事情の変更によりその違反状態が解消するに至つたときは、右処分の瑕疵は治癒されたものと解すべきである。
一、敷地の所有者の承諾を欠く道路位置廃止処分が無効でないとされた事例 二、行政処分の瑕疵が治癒されたものと認められた事例
建築基準法42条1項,建築基準法43条1項(昭和34年法律第156号による改正前のもの),建築基準法45条,東京都建築基準法施行細則(昭和25年東京都規則第194号)8条(昭和36年東京都規則第26号による改正前のもの)
判旨
建築基準法上の道路位置廃止処分において、権利者の承諾欠缺や接道義務違反の瑕疵があっても、それらが形式的・外形的に明白でなく、その後の事情変更により違法状態が実質的に解消された場合には、処分の無効は認められず、取消しの理由ともならない。
問題の所在(論点)
1. 権利者の承諾を欠く道路位置廃止処分の効力(当然無効か否か)。 2. 接道義務違反の瑕疵を伴う処分について、後の事情変更による違法の治癒が認められるか。
規範
1. 道路位置廃止処分において権利者の承諾を欠く場合であっても、その欠缺が申請書類上明白である等の特段の事情がない限り、当然無効とはならない。 2. 接道義務(建築基準法43条1項)違反の結果を生じさせる道路廃止処分は違法であるが、その後の事情変更により違反状態が実質的に解消されたときは、処分当時の違法は治癒され、当該処分を取り消すことも、無効とすることも許されない。
事件番号: 平成10(行ヒ)49 / 裁判年月日: 平成14年1月17日 / 結論: 破棄差戻
告示により一定の条件に合致する道を一括して指定する方法でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
重要事実
訴外Dは、本件道路の廃止を申請し、行政庁から道路位置廃止処分を受けた。しかし、処分に必要とされる被上告人らの承諾は、その意味を正しく理解しないまま図面に押印されたものであり、実質的な承諾を欠いていた。また、この廃止処分により被上告人らの所有地は一時的に袋地となり、接道義務(旧建築基準法43条1項)に抵触する状態となった。その後、事情変更により被上告人らの土地は袋地ではなくなり、違反状態は解消されたが、原審は承諾の欠缺のみをもって処分を無効と判断した。
あてはめ
1. 承諾の要否について:廃止処分における承諾は私権制限の解除を意味する。本件では承諾に不備はあるが、書類上明白な欠缺とはいえず、当然無効とは解されない。 2. 違法の治癒について:接道義務(43条1項)の趣旨は避難・通行の安全確保にある。本件処分により一時的に接道義務違反が生じたものの、その後の事情変更により被上告人らの土地が袋地でなくなり、安全上の支障(違反状態)が解消された以上、もはや処分を取り消す必要性も根拠も失われている。したがって、処分当時の瑕疵は治癒されたとみなすべきである。
結論
本件処分を当然無効とした原判決は誤りである。事情変更により接道義務違反の状態が解消されている以上、違法は治癒されており、処分の無効・取消しは認められない。
実務上の射程
行政行為の瑕疵の治癒を認めた重要な判例である。特に、接道義務のような公益的・技術的規制に違反する処分の瑕疵が、事後の客観的状況の変化によって治癒され、取消原因すら消滅するという判断枠組みは、抗告訴訟の理由の当否を検討する際に極めて有用である。
事件番号: 昭和38(オ)824 / 裁判年月日: 昭和40年8月17日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法による未墾地買収令書の交付に代わる公告において、地番の誤記等判示の事情があるため被買収地の表示が第三者の所有地を表示したものとみられ、それが容易に認識できる単純な地番を誤記とはいえないときは、右公告による買収処分は重大かつ明白な瑕疵を有し無効と解するのが相当である。 二 知事が所有者の開墾中の土…
事件番号: 昭和43(行ツ)130 / 裁判年月日: 昭和47年6月20日 / 結論: 棄却
一、農地買収令書の交付に代えてなされた公告の瑕疵を補正するための買収令書の交付が買収の時期から一五年八か月経過後に行なわれたものであつても、右公告は買収計画の公告後遅滞なくなされ、それが有効であるものとして、買収の時期に当該農地の所有権が国に移転し、ついで国から売渡を受けた者に移転したとして処理されてきているときは、右…
事件番号: 昭和29(オ)767 / 裁判年月日: 昭和31年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に相手方の誤認や手続上の瑕疵がある場合でも、処分の存在を認識し得た者が不服申立期間を徒過したときは、その瑕疵が当然無効と解すべき重大かつ明白なものでない限り、処分の効力は確定する。 第1 事案の概要:上告人の亡母Dの所有であった農地を、Dの死亡により上告人が相続したが、登記簿上の名義はDの…
事件番号: 昭和39(行ツ)104 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第三条第一項第三号の超過面積算定の基礎となるべき小作地は、地主がその住所のある市町村の区域内において所有する小作地にのみ限られ、隣接市町村の区域内において所有する小作地はこれに含まれない。