一、農地買収令書の交付に代えてなされた公告の瑕疵を補正するための買収令書の交付が買収の時期から一五年八か月経過後に行なわれたものであつても、右公告は買収計画の公告後遅滞なくなされ、それが有効であるものとして、買収の時期に当該農地の所有権が国に移転し、ついで国から売渡を受けた者に移転したとして処理されてきているときは、右令書の交付に代わる公告の瑕疵は、買収令書の交付によつて補正されると解するのが相当である。 二、農地買収令書の交付に代わる公告の瑕疵が後に買収令書の交付によつて補正された場合においては、農地買収処分における実体上の要件の存否は、右公告がなされた時を基準として判断すべきである。
一、農地買収令書の交付に代わる公告の瑕疵が一五年余後に行なわれた買収令書の交付によつて補正されるとした事例 二、農地買収令書の交付に代わる公告の瑕疵がのちに買収令書の交付によつて補正された場合における農地買収処分の違法判断の基準時
自作農創設特別措置法9条1項,農地法施行法2条1項
判旨
行政処分に手続上の瑕疵がある場合でも、表見的に形成された法律関係を維持する必要があるときは、後日の追完による補正の効力が認められる。また、その補正により適法となる実体上の要件は、補正される行為(当初の公告等)の時点を基準として判断すべきである。
問題の所在(論点)
行政処分の手続的瑕疵を事後的に補正(追完)することの可否、および補正が行われた場合における実体上の要件の判断基準時が問題となる。
規範
行政処分の手続上の瑕疵は、当該瑕疵が補正を許す程度の不備であり、かつ既に当該処分を前提とした法律関係が形成されている場合、後日の追完によって補正の効力を認めることができる。この場合、買収の対象となる農地に該当するか否かという実体上の要件は、補正の対象となる行為(当初の公告等)がなされた時を基準として判断すべきである。
重要事実
事件番号: 昭和43(オ)1350 / 裁判年月日: 昭和47年7月18日 / 結論: 破棄差戻
買収令書の交付に代わる公告に瑕疵があり、その瑕疵の補正のために、農地法施行法二条一項一号の規定に基づき買収令書の交付がされたとしても、その交付が、右公告による買収処分の無効を確認する判決が確定したのちにされたものであるときは、その交付による農地買収処分は無効である。
不在地主である上告人の農地について、被上告人(大阪府知事)は買収令書の交付に代わる公告を行った。しかし、上告人の住所は容易に判明したにもかかわらず公告の方法をとり、かつ公告自体にも買収時期等の記載を欠く瑕疵があった。その後、当該農地は国から第三者に売り渡され、長期間が経過した。本件訴訟係属後(当初の公告から約13年後)、知事は瑕疵を補正する趣旨で、法定要件を具備した買収令書を上告人に交付した。
あてはめ
本件公告には住所調査の不備や記載事項の欠落という瑕疵があるが、これらは補正を許す程度の瑕疵である。また、すでに当該公告を前提に第三者への売渡しが行われ、表見的な法律関係が形成されている。そうであれば、令書交付が著しく遅滞したとしても、補正による効力を肯定すべきである。そして、実体上の要件に関する行政庁の判断は当初の公告時になされているため、買収対象性の判断基準時は、後日の令書交付時ではなく当初の公告時となる。
結論
買収令書の事後的交付による公告の瑕疵の補正は認められる。また、買収対象地の該当性は当初の公告時を基準に判断されるため、本件買収処分は適法である。
実務上の射程
行政処分の瑕疵の治癒(追完)を認めた重要判例である。処分後に長期間が経過し、第三者が関与するなど新たな法的状態が形成されている場合に、法的安定性の観点から瑕疵の治癒を認める論理として活用できる。また、判断基準時については、処分時(本件では補正対象時)とする原則を確認している。
事件番号: 昭和42(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和43年6月13日 / 結論: 破棄自判
自作農創設特別措置法による買収計画の公告および承認があつた後、買収令書の交付または交付に代わる公告が行なわれた事跡がなく、「買収の時期」より十余年も経過して後に、農地法施行法第二条第一項第一号の規定に依拠し、あらたに買収令書を交付して買収処分をすることは許されない。
事件番号: 昭和33(オ)308 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、買収令書の交付が買収計画で定められた買収時期より遅れたとしても、直ちに買収処分が違法となるわけではない。当初の公告の瑕疵を補正する趣旨で後になされた令書交付は、買収計画の時期に遡って所有権移転の効力を生じさせる。 第1 事案の概要:不在地主である上告人…
事件番号: 昭和28(オ)1395 / 裁判年月日: 昭和30年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の違法性が重大であっても、それが当然無効とされるためには、瑕疵が明白であることを要する。本件のように農地としての性質を一部有する土地の買収処分において、農地性の判断に誤りがあるとしても、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人の所有する土地は、もともと農地であったが、一時的に…
事件番号: 昭和38(オ)508 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 棄却
土地の一部に対する農地買収処分において、買収令書上は、分筆、地目変換前の土地台帳の表示に基づき買収の対象及び範囲の地番、地目、地積を表示し、かつ土地の一部買収であることを摘要欄に付記するだけで、買収部分の図面の添付もない場合でも、これら記載から推して関係当事者が買収部分を容易に看取することができ、ことに処分の相手方にお…