判旨
自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、買収令書の交付が買収計画で定められた買収時期より遅れたとしても、直ちに買収処分が違法となるわけではない。当初の公告の瑕疵を補正する趣旨で後になされた令書交付は、買収計画の時期に遡って所有権移転の効力を生じさせる。
問題の所在(論点)
買収計画上の「買収の時期」から大幅に遅れて買収令書が交付された場合、当該買収処分の効力および所有権移転の時期はどう解すべきか。
規範
買収計画で定められた「買収の時期」より遅れて買収令書が交付されることは法の予想するところであり、遅延の事実のみで買収処分が当然に違法となるものではない。手続上の瑕疵を補正し法律関係を安定させる趣旨で後日令書が交付された場合、買収による所有権移転の効力は、買収計画において予定・公告された「買収の時期」に遡って発生する。
重要事実
不在地主である上告人の所有地について、昭和23年2月、買収時期を同年3月とする買収計画が公告された。昭和24年に令書交付に代わる公告が行われ、国から被上告人らへ売り渡され登記も完了したが、後の昭和30年、当初の公告に瑕疵があったとしてこれを取り消し、改めて買収令書を上告人に交付した。上告人は、買収時期から7年経過した後の令書交付は違法であり、買収は無効であると主張した。
あてはめ
本件では当初の「令書の交付に代わる公告」に瑕疵があったが、その後の令書交付は既に行われた売渡等の法律状態を安定させる補正の趣旨で行われている。買収時期から7年経過しているものの、一連の手続の効力を否定することは相当ではない。したがって、当初の「買収の時期」に遡って国が所有権を取得したと解するのが実体的な権利関係に合致する。また、令書の代用公告の取消しについても、令書の直接交付をもって代えることは手続上許容される。
結論
買収令書の交付が遅延しても買収処分は有効であり、所有権移転の効力は買収計画で定められた時期に遡及して発生する。
事件番号: 昭和34(オ)1216 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
収計画の樹立公告後遅滞なく買収令書の交付に代る公告が行われ、これが有効であるとの前提の下に「買収の時期」に買収目的地の所有権が国に移転し、次いで売渡処分により国からさらに売渡の相手方に移転したものとして取扱われて来たが、その後買収令書の交付に代る公告に瑕疵があることが発見されたため、これを補正し、法律関係を安定する趣旨…
実務上の射程
行政手続の遅延や形式的瑕疵があったとしても、その後の補正によって法律関係の安定を図るべき場合において、処分の有効性と効力発生時期の遡及を認める際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)405 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第五条第四号による都道府県知事の指定がない以上、都市計画法第一二条第一項の土地区劃整理施行区域内の農地であつても、これを買収することができる。 二 原判決の確定するところによれば、本件買収計画に対する訴願の裁決書はおそくも昭和二三年一一月二〇日上告人に送付せられ、その後同二四年一月二九日に本件買…
事件番号: 昭和35(オ)1426 / 裁判年月日: 昭和37年9月7日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画後一〇年以上経過して行われた買収処分も必ずしも無効とはいえない。 二 農地買収を不法行為として損害賠償を請求するについての時効期間の起算日は賠償を請求し得べき事実を知つた日と解すべきである。
事件番号: 昭和43(行ツ)130 / 裁判年月日: 昭和47年6月20日 / 結論: 棄却
一、農地買収令書の交付に代えてなされた公告の瑕疵を補正するための買収令書の交付が買収の時期から一五年八か月経過後に行なわれたものであつても、右公告は買収計画の公告後遅滞なくなされ、それが有効であるものとして、買収の時期に当該農地の所有権が国に移転し、ついで国から売渡を受けた者に移転したとして処理されてきているときは、右…
事件番号: 昭和29(オ)28 / 裁判年月日: 昭和33年6月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地買収処分において、真実の所有者でない登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、違法ではあるが当然無効とはならず、取消訴訟の対象となるにすぎない。 第1 事案の概要:所有者BがDに対し本件農地を売却し、Dが有効に所有権を取得した。しかし、登記簿上の名義人は依然としてBのままであった。国は、自…