収計画の樹立公告後遅滞なく買収令書の交付に代る公告が行われ、これが有効であるとの前提の下に「買収の時期」に買収目的地の所有権が国に移転し、次いで売渡処分により国からさらに売渡の相手方に移転したものとして取扱われて来たが、その後買収令書の交付に代る公告に瑕疵があることが発見されたため、これを補正し、法律関係を安定する趣旨において、「買収の時期」から一〇年を経過した後にあらためて買収令書が交付された場合には、買収令書の交付が右のように遅れたということだけで、買収処分の効力を否定すべきものではなく、右の場合、買収目的地の所有権移転の効果は、買収令書の交付により、「買収の時期」に遡って生ずるものと解すべきである。
収計画中に定められた「買収の時期」から一〇年を経過した後に行われた買収令書の交付による買収処分が有効とされ、買収目的地の所有権が「買収の時期」に国に移転したとされた事例。
判旨
農地買収計画で定められた「買収の時期」から大幅に遅れて買収令書が交付された場合であっても、既になされた無効な公告手続を補正し法律関係を安定させる趣旨でなされたときは、当該買収処分は有効であり、所有権移転の効力は買収計画上の「買収の時期」に遡及して生じる。
問題の所在(論点)
買収計画で定められた「買収の時期」から長期間経過した後に買収令書が交付された場合、その買収処分は有効か。また、有効である場合、所有権移転の効力はいつ発生するか(遡及効の成否)。
規範
行政処分において、手続上の瑕疵(告知の遅滞や方法の不備)があったとしても、後に適法な通知(買収令書の交付)がなされ、それが先行する不完全な手続によって形成された外形的な法律関係を補正し安定させる趣旨でなされた場合には、当該処分は有効に成立する。この場合、処分の効力は、当初の計画において予定され公告されていた時期に遡って発生するものと解するのが相当である。
重要事実
不在地主である上告人所有の土地に対し、自創法に基づき昭和22年7月2日を「買収の時期」とする買収計画が樹立された。同年中に買収令書交付に代わる公告(瑕疵あり)が行われ、国への所有権移転登記および被上告人への売渡登記が完了した。しかし、実際には買収令書が上告人に直接交付されていなかったため、約10年後の昭和32年になって改めて買収令書が交付された。上告人は、買収の時期から10年を経過した後の交付は無効であり、所有権移転の遡及効も認められないと主張して登記抹消を求めた。
事件番号: 昭和33(オ)308 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、買収令書の交付が買収計画で定められた買収時期より遅れたとしても、直ちに買収処分が違法となるわけではない。当初の公告の瑕疵を補正する趣旨で後になされた令書交付は、買収計画の時期に遡って所有権移転の効力を生じさせる。 第1 事案の概要:不在地主である上告人…
あてはめ
本件における昭和32年の買収令書交付は、昭和22年当時の買収令書交付に代わる公告に瑕疵があったことを補正し、既に国から第三者へ売り渡された等の法律関係を安定させる趣旨でなされたものである。10年という期間が経過しているものの、法の予想する範囲内での遅滞といえ、これをもって直ちに処分を違法とすべきではない。また、当初の公告が有効であるとの前提で既に登記等の手続が進行していたという実態に鑑みれば、後になされた適法な交付により、当初予定されていた「買収の時期」に遡って所有権移転の効果が生じたとみるのが、法的安定性の観点から妥当である。
結論
本件買収処分は有効であり、所有権移転の効力は昭和22年7月2日に遡って生じるため、現在の登記は実体関係に合致しており、抹消請求は認められない。
実務上の射程
行政処分の瑕疵の治癒や、告知・送達の遅滞が処分の効力に及ぼす影響、および公法上の法律関係の早期安定を重視する事案の規範として活用できる。特に、長期間経過後に手続を補完した場合の遡及効の可否について、実態的な権利関係の安定という視点から論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和34(オ)1215 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
農地所有権が登記簿上の住所から転居した際、郵便局にその旨届出をしておいたため、買収令書の交付に代る公告が行われた昭和二四年三月三一日当時においては、登記簿上の旧住所あての郵便物は転送されすべて新住所で受領されており、買収計画に関する同年二月二一日附の県農地委員会の訴願裁決書(あて先は、いつたん旧住所を記載の上新住所に訂…
事件番号: 昭和36(オ)732 / 裁判年月日: 昭和38年12月24日 / 結論: 棄却
一 農地買収の時期が売渡の時期より後であつても、買収処分は無効とはいえない。 二 農地の買収、売渡計画の買収、売渡の時期の変更につき公告手続を経ないでした買収処分も無効ではない。
事件番号: 昭和32(オ)1158 / 裁判年月日: 昭和36年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に法令の定める除外事由に該当する土地を買収したという違法があっても、直ちに当然無効となるわけではなく、その瑕疵が重大かつ明白である場合に限り無効となる。 第1 事案の概要:本件土地は、客観的には旧自創法5条5号に該当し、本来であれば買収から除外されるべき土地であった。しかし、処分庁は同号の…
事件番号: 昭和26(オ)405 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第五条第四号による都道府県知事の指定がない以上、都市計画法第一二条第一項の土地区劃整理施行区域内の農地であつても、これを買収することができる。 二 原判決の確定するところによれば、本件買収計画に対する訴願の裁決書はおそくも昭和二三年一一月二〇日上告人に送付せられ、その後同二四年一月二九日に本件買…