農地所有権が登記簿上の住所から転居した際、郵便局にその旨届出をしておいたため、買収令書の交付に代る公告が行われた昭和二四年三月三一日当時においては、登記簿上の旧住所あての郵便物は転送されすべて新住所で受領されており、買収計画に関する同年二月二一日附の県農地委員会の訴願裁決書(あて先は、いつたん旧住所を記載の上新住所に訂正されている。)等もその頃新住所で受領されていたにかかわらず、旧住所あての右裁決書がいつたん返送された等の理由で、買収令書の交付を試みることすらしないで、ただちに買収令書の交付が不可能なものとしてなされた買収令書の交付に代る公告は、当然無効のものと解すべきである。
買収令書の交付に代る公告が当然無効と認められた事例。
判旨
行政処分において、法令上必要な書類の交付を試みることなく安易に公告をもって代えた場合、その手続上の瑕疵は重大かつ明白であり、当該処分は当然無効となる。
問題の所在(論点)
行政処分(農地買収令書の交付)に代えて公告を行うための前提条件を欠く場合、その手続上の瑕疵は処分の無効事由(重大かつ明白な瑕疵)に該当するか。
規範
行政処分の無効事由としての「重大かつ明白な瑕疵」とは、処分の要件たる手続を欠いたことが、客観的にみて処分の根拠法の趣旨に著しく反し、かつ、その事実が外形上も明らかであることを指す。特に、相手方の権利を制限する処分において、交付が可能な状況であるにもかかわらず、交付の試みすら行わずに公告のみで済ませた場合、その手続的瑕疵は重大かつ明白なものとして、処分を当然無効と解すべきである。
重要事実
農地買収処分に際し、行政庁が被上告人に対して令書の交付を試みるべきところ、交付を試みた形跡が一切なかった。当時、被上告人宛の郵便物はいずれも新住所で受領されており、行政庁が通常の注意を払えば令書を交付することは十分に可能な状況であった。しかし、行政庁は交付の手続を省略し、令書の交付に代えて公告を行うことで買収処分を強行した。
事件番号: 昭和34(オ)1216 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
収計画の樹立公告後遅滞なく買収令書の交付に代る公告が行われ、これが有効であるとの前提の下に「買収の時期」に買収目的地の所有権が国に移転し、次いで売渡処分により国からさらに売渡の相手方に移転したものとして取扱われて来たが、その後買収令書の交付に代る公告に瑕疵があることが発見されたため、これを補正し、法律関係を安定する趣旨…
あてはめ
本件では、当時、被上告人の新住所宛の郵便物が遅滞なく到達していた事実から、令書を交付しようとすれば容易に交付できた状態であったといえる。それにもかかわらず、行政庁が令書の交付を試みた形跡すら認められない以上、「交付が困難な状態」であったとは到底認められない。このような状況下で行われた公告は、法定の手続を著しく懈怠したものといえ、その瑕疵の重大性および明白性は肯定される。
結論
令書の交付に代わる公告は重大かつ明白な瑕疵がある処分として当然無効である。したがって、これに基づく買収処分も無効となる。
実務上の射程
行政処分の無効判断において「重大明白説」を前提としつつ、手続的瑕疵がどの程度のレベルで「当然無効」に至るかを示す具体例として活用できる。特に相手方の受領能力があるにもかかわらず、行政側が調査や送達を怠って公告等の簡易な方法に逃げた場合の処分性を否定する文脈で有用である。
事件番号: 昭和32(オ)1158 / 裁判年月日: 昭和36年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に法令の定める除外事由に該当する土地を買収したという違法があっても、直ちに当然無効となるわけではなく、その瑕疵が重大かつ明白である場合に限り無効となる。 第1 事案の概要:本件土地は、客観的には旧自創法5条5号に該当し、本来であれば買収から除外されるべき土地であった。しかし、処分庁は同号の…
事件番号: 昭和28(オ)1395 / 裁判年月日: 昭和30年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の違法性が重大であっても、それが当然無効とされるためには、瑕疵が明白であることを要する。本件のように農地としての性質を一部有する土地の買収処分において、農地性の判断に誤りがあるとしても、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人の所有する土地は、もともと農地であったが、一時的に…
事件番号: 昭和41(行ツ)52 / 裁判年月日: 昭和44年2月6日 / 結論: 棄却
昭和二五年法律第七二号による改正前の旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)が法人の超過所得算定の基礎とする「資本金額」の計算上、同法一六条による積立金額から除外される「法人税として納付すべき金額」には、当該事業年度の期首において客観的に成立していたと考えられる前事業年度の所得に関する更正処分により追徴を受けた不足税額は含…
事件番号: 昭和36(オ)804 / 裁判年月日: 昭和37年7月5日 / 結論: 棄却
行政処分の瑕疵が客観的に明白であるということは、処分関係人の知、不知とは無関係に、また、権限ある国家機関の判定をまつまでもなく、何人の判断によつてもほぼ同一の結論に到達しうる程度に明らかであることを指すものと解すべきである。