昭和二五年法律第七二号による改正前の旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)が法人の超過所得算定の基礎とする「資本金額」の計算上、同法一六条による積立金額から除外される「法人税として納付すべき金額」には、当該事業年度の期首において客観的に成立していたと考えられる前事業年度の所得に関する更正処分により追徴を受けた不足税額は含まれるが、当該事業年度において納税の遅延に基づいて課せられた加算税は含まれない。
旧法人税法(昭和二二年法律第二八号で同二五年法律第七二号による改正前のもの)一六条所定の積立金額から除外される「法人税として納付すべき金額」の範囲
法人税法(昭和22年法律28号)昭和25年法律第72号による改正前の13条,法人税法(昭和22年法律28号)昭和25年法律第72号による改正前の15条,法人税法(昭和22年法律28号)昭和25年法律第72号による改正前の16条
判旨
行政処分の無効は、瑕疵が重大かつ明白な場合に限られ、明白性とは処分の外形上客観的に誤認が一見して看取できる程度のものでなければならない。課税処分において、経費否認の当否や法令解釈の疑義、些少な計算誤りによる瑕疵は、原則として重大かつ明白な瑕疵には当たらない。
問題の所在(論点)
行政処分の取消訴訟の出訴期間を過ぎた後において、処分の瑕疵を理由にその効力を否定するための要件(当然無効の基準)、および課税処分における事実認定の誤りや法令解釈の誤りが「重大かつ明白な瑕疵」に該当するか。
規範
行政処分が当然無効となるためには、その瑕疵が重大かつ明白であることを要する。ここで「明白」とは、処分の外形上客観的に処分庁の誤認が一見看取できる程度のものでなければならない。また、無効原因の存在については、無効を主張する者が具体的事実に基づいて主張立証すべきである。
重要事実
事件番号: 昭和36(オ)502 / 裁判年月日: 昭和37年2月23日 / 結論: 棄却
所得税法第四二条第三項にいう源泉徴収義務者でない者に対してなされた源泉徴収所得税徴収決定は、同法条の解釈適用をあやまつた違法があるに過ぎないものであるから、裁判所が右の処分は憲法第三〇条、第八四条に違反すると認定したことは、違憲の判断の必要のない事項についてなされた無用な判断というべきである。
課税庁(被上告人)は、納税者(上告人)に対し、前年度の所得計算上の否認金額を益金加算するなどの操作を含む本件更正処分を行った。上告人は、経費否認が不当であることや、積立金額の計算において加算税額を控除した点に法令解釈の誤りがあること等を理由に、本件更正処分は当然無効であると主張して争った。なお、加算税額を控除した点については、後に法令解釈として誤りであることが判明したが、それによる税額への影響は些少であった。
あてはめ
まず、経費否認の当否は、原則として事実関係を精査してはじめて判明する性質のものであり、外形上明白な瑕疵とはいえない。次に、加算税額を積立金から控除した点については、法人税法上の解釈が必ずしも明らかではなく、客観的に一見して誤認が看取できるとはいえない。さらに、当該誤りによる税額の減少分は些少であり、処分の根幹を揺るがす重大な瑕疵とも認められない。したがって、これらの瑕疵は「重大かつ明白」なものとは到底解しがたい。
結論
本件更正処分には一部に計算上の誤り(瑕疵)が認められるものの、それが重大かつ明白なものとはいえないため、当然無効とはならない。上告棄却。
実務上の射程
行政処分の無効基準について「重大かつ明白」説を採用した代表的判例。特に「明白性」の意義を「外形上客観的に一見看取できること」と定義した点は重要である。税務訴訟に限らず、行政法一般の無効主張において、処分の外観から直ちに瑕疵が判明するかどうかを検討する際の判断指標となる。
事件番号: 昭和32(オ)1158 / 裁判年月日: 昭和36年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に法令の定める除外事由に該当する土地を買収したという違法があっても、直ちに当然無効となるわけではなく、その瑕疵が重大かつ明白である場合に限り無効となる。 第1 事案の概要:本件土地は、客観的には旧自創法5条5号に該当し、本来であれば買収から除外されるべき土地であった。しかし、処分庁は同号の…
事件番号: 昭和34(オ)1215 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
農地所有権が登記簿上の住所から転居した際、郵便局にその旨届出をしておいたため、買収令書の交付に代る公告が行われた昭和二四年三月三一日当時においては、登記簿上の旧住所あての郵便物は転送されすべて新住所で受領されており、買収計画に関する同年二月二一日附の県農地委員会の訴願裁決書(あて先は、いつたん旧住所を記載の上新住所に訂…
事件番号: 昭和36(オ)804 / 裁判年月日: 昭和37年7月5日 / 結論: 棄却
行政処分の瑕疵が客観的に明白であるということは、処分関係人の知、不知とは無関係に、また、権限ある国家機関の判定をまつまでもなく、何人の判断によつてもほぼ同一の結論に到達しうる程度に明らかであることを指すものと解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)161 / 裁判年月日: 昭和33年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に相手方の選択を誤った違法がある場合であっても、その瑕疵が重大かつ明白でなく、当然無効と解すべき事情がない限り、出訴期間内に取消訴訟を提起しない以上、当該処分の効力を否定することはできない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は農地の転貸人であったが、行政庁は本件農地を上告人ではなく訴外の第…