判旨
行政処分に相手方の選択を誤った違法がある場合であっても、その瑕疵が重大かつ明白でなく、当然無効と解すべき事情がない限り、出訴期間内に取消訴訟を提起しない以上、当該処分の効力を否定することはできない。
問題の所在(論点)
行政処分における処分の相手方の誤認という瑕疵が、行政処分の当然無効事由(重大かつ明白な瑕疵)に該当するか。
規範
行政処分に瑕疵がある場合において、それが当然無効となるためには、当該瑕疵が重大かつ明白であることを要する。単なる処分の相手方の誤認という違法があるにとどまる場合は、当然無効をもたらす瑕疵には当たらない。
重要事実
上告人(原告)は農地の転貸人であったが、行政庁は本件農地を上告人ではなく訴外の第三者2名に売り渡す処分を行った。上告人は、本来自分に売り渡されるべきであったとして、相手方を誤った当該処分の無効を主張して争ったが、法定の出訴期間内に取消訴訟を提起していなかった。
あてはめ
本件において、農地を本来の売却対象者ではない第三者に売り渡した事実は、処分の相手方を誤った違法な処分である。しかし、このような相手方の誤認という瑕疵は、処分の存在自体を根底から否定させるような重大かつ明白なものとまではいえず、当然無効を来すべき場合には当たらない。したがって、公定力により、適法に取り消されない限り処分の効力は維持される。
結論
本件売却処分は当然無効とはいえず、法定の期間内に取消訴訟を提起していない以上、処分の効力を争うことはできない。
実務上の射程
行政処分の無効と取消しの区別に関する古典的判例である。処分の相手方の誤り(人違い等)が直ちに無効事由になるわけではないことを示しており、取消訴訟の排他的管轄(公定力)を回避するための無効主張が認められる範囲を限定的に解する実務の大枠に合致する。
事件番号: 昭和33(オ)91 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消事由にすぎない瑕疵がある場合であっても、その瑕疵が処分を当然無効ならしめるほどの重大かつ明白なものでない限り、当該処分は当然には無効とならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収処分に以下の無効原因があると主張した。(1)県係員の虚偽指示に基づく買収計画、(2)異議却下時の農地委…
事件番号: 昭和29(オ)28 / 裁判年月日: 昭和33年6月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地買収処分において、真実の所有者でない登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、違法ではあるが当然無効とはならず、取消訴訟の対象となるにすぎない。 第1 事案の概要:所有者BがDに対し本件農地を売却し、Dが有効に所有権を取得した。しかし、登記簿上の名義人は依然としてBのままであった。国は、自…
事件番号: 昭和32(オ)1158 / 裁判年月日: 昭和36年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に法令の定める除外事由に該当する土地を買収したという違法があっても、直ちに当然無効となるわけではなく、その瑕疵が重大かつ明白である場合に限り無効となる。 第1 事案の概要:本件土地は、客観的には旧自創法5条5号に該当し、本来であれば買収から除外されるべき土地であった。しかし、処分庁は同号の…
事件番号: 昭和33(オ)5 / 裁判年月日: 昭和36年3月24日 / 結論: 棄却
買収計画の縦覧期間が一日不足していたということだけでは、右計画に基く買収処分は当然無効となるものではない。
事件番号: 昭和28(オ)34 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消しに関する争いにおいて、処分が行政法上当然に無効であると認められない限り、適法に確定した事実に照らして当該処分を有効と認めるのが相当である。 第1 事案の概要:上告人は、本件の各取消処分および取消の決定について、憲法違反を主張するとともに、実質的にこれらが行政法上無効であると主張して…