判旨
行政処分に法令の定める除外事由に該当する土地を買収したという違法があっても、直ちに当然無効となるわけではなく、その瑕疵が重大かつ明白である場合に限り無効となる。
問題の所在(論点)
本来買収除外とされるべき土地について、その指定をせずになされた買収処分の瑕疵が、当然無効といえるか。行政処分の無効事由の判断基準が問題となる。
規範
行政処分が当然無効となるのは、処分庁の認定に重大かつ明白な瑕疵がある場合に限られる。客観的に買収除外事由(旧自創法5条5号)に該当する土地について除外指定をせずになされた買収処分であっても、直ちに当然無効とはならず、右の重大明白性の基準によって決すべきである。
重要事実
本件土地は、客観的には旧自創法5条5号に該当し、本来であれば買収から除外されるべき土地であった。しかし、処分庁は同号の指定を行わずに本件土地の買収処分を執り行った。上告人側は、この買収処分が当然無効であると主張して争った。
あてはめ
本件土地の買収計画樹立当時の状況に照らせば、当該土地が旧自創法5条5号の除外事由に当たらないとしてなされた処分庁の判断には、重大かつ明白な瑕疵があるとは認められない。客観的に除外事由に該当する事実があったとしても、処分庁の認定過程における瑕疵が「重大かつ明白」という水準に達していない以上、公定力を否定すべき無効な処分とはいえない。
結論
本件買収処分は当然無効とはいえず、有効である。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の無効判断における「重大明白説」を堅持した基本判例である。答案上では、処分の違法性を前提としつつ、無効確認訴訟や出訴期間経過後の公定力の打破が問題となる場面で、瑕疵の重大性と明白性の二要件を検討する際の規範として用いる。
事件番号: 昭和36(オ)1320 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効となるための「瑕疵の明白性」は、処分の外形上客観的に、誤認が一見して看取できるか否かにより決すべきであり、行政庁の調査怠慢の有無は直接関係しない。 第1 事案の概要:行政庁が、被上告人の自作地である農地を小作地であると誤認し、農地買収処分を行った事案。原審は、本件農地が実際には自…
事件番号: 昭和37(オ)1389 / 裁判年月日: 昭和38年11月1日 / 結論: 棄却
一 農地買収処分の前提としての調査が十分になされたかどうかは、当該処分の有効無効に関係しない(昭和三六年三月七日第三小法廷判決、民集一五巻三号三八一頁)。 二 共有にかかる農地を単独所有であるとして為した買収処分の違法は、その誤認が原審判示のように無理からぬ事情のもとでなされた以上、重大かつ明白な瑕疵ということはできず…
事件番号: 昭和34(オ)1215 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
農地所有権が登記簿上の住所から転居した際、郵便局にその旨届出をしておいたため、買収令書の交付に代る公告が行われた昭和二四年三月三一日当時においては、登記簿上の旧住所あての郵便物は転送されすべて新住所で受領されており、買収計画に関する同年二月二一日附の県農地委員会の訴願裁決書(あて先は、いつたん旧住所を記載の上新住所に訂…
事件番号: 昭和28(オ)1395 / 裁判年月日: 昭和30年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の違法性が重大であっても、それが当然無効とされるためには、瑕疵が明白であることを要する。本件のように農地としての性質を一部有する土地の買収処分において、農地性の判断に誤りがあるとしても、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人の所有する土地は、もともと農地であったが、一時的に…
事件番号: 昭和36(オ)1253 / 裁判年月日: 昭和38年3月1日 / 結論: 棄却
右誤認が原審認定の事情のもとで明白な瑕疵とはいえない以上、買収処分は違法であつても、無効ではない。