行政処分の瑕疵が客観的に明白であるということは、処分関係人の知、不知とは無関係に、また、権限ある国家機関の判定をまつまでもなく、何人の判断によつてもほぼ同一の結論に到達しうる程度に明らかであることを指すものと解すべきである。
行政処分の瑕疵が客観的に明白であるということの意義。
行政事件訴訟特例法1条
判旨
行政処分の無効事由としての「瑕疵の明白性」とは、処分関係人の知・不知を問わず、何人の判断によってもほぼ同一の結論に到達し得る程度に明らかであることを指す。
問題の所在(論点)
行政処分の無効事由としての「瑕疵の明白性」の意義、特にその客観的基準の具体的内容が問題となる。
規範
行政処分が無効となるための「瑕疵の明白性」とは、処分要件の存在を肯定する処分庁の認定の誤りが、処分成立の当初から客観的に明白であることを要する。ここに「客観的に明白」とは、処分関係人の知、不知とは無関係に、特に権限ある国家機関の判断を待つまでもなく、何人の判断によっても、ほぼ同一の結論に到達し得る程度に明らかであることを指す。
重要事実
行政庁がある行政処分を行ったが、その処分には要件の存否に関する認定の誤りという瑕疵が存在した。原審は、当該瑕疵の明白性を判断するにあたって処分庁側の主観的事情を基準とした疑いがある判断を下し、当該処分を無効とした。これに対し、処分の効力を争う側が上告したものである。
事件番号: 昭和36(オ)4 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
農地の売渡の相手方を誤つた違法があつても、売渡処分を当然無効とはいえない。
あてはめ
瑕疵の明白性は、主観的概念に対応する「客観的」なものであるべきである。したがって、処分庁や関係者が現実に瑕疵を知っていたか否かという主観的事情ではなく、外部から見て誰の目にも明らかといえるかが基準となる。本件では、原審が認定した事実関係に照らせば、処分庁の主観的事情を措いても、その瑕疵は何人の判断によっても同一の結論に達する程度に客観的に明白であると認められる。
結論
本件行政処分には客観的に明白な瑕疵があるため無効である。瑕疵の明白性の判断基準を処分庁の主観に求めたかのような原審の説示に疑義はあるものの、結論において無効と認めた判断は正当である。
実務上の射程
行政処分の当然無効を主張する場合の「明白性」の定義として定着している。実務上は、外見上・客観的に誤りが明白な場合に限り無効とし、それ以外は取消訴訟の排他的管轄に委ねるという法的安定性の要請を具体化したものとして活用される。
事件番号: 昭和37(オ)1389 / 裁判年月日: 昭和38年11月1日 / 結論: 棄却
一 農地買収処分の前提としての調査が十分になされたかどうかは、当該処分の有効無効に関係しない(昭和三六年三月七日第三小法廷判決、民集一五巻三号三八一頁)。 二 共有にかかる農地を単独所有であるとして為した買収処分の違法は、その誤認が原審判示のように無理からぬ事情のもとでなされた以上、重大かつ明白な瑕疵ということはできず…
事件番号: 昭和32(オ)1158 / 裁判年月日: 昭和36年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に法令の定める除外事由に該当する土地を買収したという違法があっても、直ちに当然無効となるわけではなく、その瑕疵が重大かつ明白である場合に限り無効となる。 第1 事案の概要:本件土地は、客観的には旧自創法5条5号に該当し、本来であれば買収から除外されるべき土地であった。しかし、処分庁は同号の…
事件番号: 昭和36(オ)1253 / 裁判年月日: 昭和38年3月1日 / 結論: 棄却
右誤認が原審認定の事情のもとで明白な瑕疵とはいえない以上、買収処分は違法であつても、無効ではない。