買収令書の交付に代わる公告に瑕疵があり、その瑕疵の補正のために、農地法施行法二条一項一号の規定に基づき買収令書の交付がされたとしても、その交付が、右公告による買収処分の無効を確認する判決が確定したのちにされたものであるときは、その交付による農地買収処分は無効である。
買収処分の無効を確認する判決が確定したのちにされた農地法施行法二条一項一号に基づく買収令書の交付による農地買収処分の効力
自作農創設特別措置法(昭和21年法律第43号)6条,自作農創設特別措置法(昭和21年法律第43号)9条,農地法施行法2条1項1号,行政事件訴訟特例法(昭和23年法律第81号)1条,行政事件訴訟特例法(昭和23年法律第81号)12条
判旨
行政処分の無効確認判決が確定した後は、当該処分の瑕疵を補正して有効化させることはできない。判決確定により、補正によって維持すべき表見的な法律関係の基盤が失われ、原告の権利関係の安定に対する期待を保護すべきだからである。
問題の所在(論点)
行政処分の無効確認判決が確定した後に、行政庁が当該処分の瑕疵を補正(追完)することによって、遡って処分を有効なものとすることができるか。
規範
行政処分の瑕疵を補正するための追完行為(買収令書の交付等)は、原則として著しく遅滞して行われたとしてもその効力を否定されない。しかし、当該処分の無効を確認する判決が確定した後にされた補正行為は、もはや処分を有効にさせる効力を有しない。これは、①勝訴判決を得た原告の権利安定への期待を保護すべき公平の見地、および②無効確認判決の対世効により、補正によって維持すべき表見的な法律関係の基盤が消滅することに基づく。
重要事実
上告人所有の土地に対し、茨城県知事は昭和24年に農地買収処分(公告による代用)を行った。上告人はこの処分の無効確認訴訟を提起し、昭和32年4月に「公告による処分は重大かつ明白な瑕疵があり無効である」旨の勝訴判決が確定した。ところが、知事は判決確定後の同年6月、当初の買収計画に基づき、改めて買収令書を上告人に交付して処分の瑕疵を補正し、買収の有効性を主張した。
事件番号: 昭和43(行ツ)130 / 裁判年月日: 昭和47年6月20日 / 結論: 棄却
一、農地買収令書の交付に代えてなされた公告の瑕疵を補正するための買収令書の交付が買収の時期から一五年八か月経過後に行なわれたものであつても、右公告は買収計画の公告後遅滞なくなされ、それが有効であるものとして、買収の時期に当該農地の所有権が国に移転し、ついで国から売渡を受けた者に移転したとして処理されてきているときは、右…
あてはめ
本件では、当初の買収処分について無効確認判決が確定している。この判決確定により、上告人は自己の権利関係が安定したという正当な期待を有するに至っており、これに反する補正を認めることは公平に反する。また、無効確認判決には第三者効(対世効)が認められるため、買収処分を前提として形成されていた表見的な法律関係は判決により根底から覆されている。したがって、判決確定後の昭和32年6月に行われた買収令書の交付は、もはや無効な処分を有効化させる基盤を欠いており、その効力を認めることはできない。
結論
無効確認判決確定後の瑕疵の補正は認められず、買収令書の交付による処分の有効化は否定される。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
行政処分の瑕疵の補正(追完)の限界を画した判例である。答案上は、行政庁による瑕疵の治癒や追完の可否が問われる場面で、信義則や判決の既判力・対世効を根拠に、争訟手続の進行(特に判決確定)が補正の「時期的な限界」となることを論証する際に活用する。
事件番号: 昭和36(オ)1253 / 裁判年月日: 昭和38年3月1日 / 結論: 棄却
右誤認が原審認定の事情のもとで明白な瑕疵とはいえない以上、買収処分は違法であつても、無効ではない。
事件番号: 昭和29(オ)28 / 裁判年月日: 昭和33年6月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地買収処分において、真実の所有者でない登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、違法ではあるが当然無効とはならず、取消訴訟の対象となるにすぎない。 第1 事案の概要:所有者BがDに対し本件農地を売却し、Dが有効に所有権を取得した。しかし、登記簿上の名義人は依然としてBのままであった。国は、自…
事件番号: 昭和37(オ)1403 / 裁判年月日: 昭和39年10月20日 / 結論: 破棄自判
自作農創設特別措置法により買収農地の売渡を受けた者が当該農地の所有権を時効取得したときは、右農地の被買収者は、その買収処分の無効確認を求める訴の利益を有しない。
事件番号: 昭和43(行ツ)82 / 裁判年月日: 昭和46年11月16日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法三条に基づく買収処分が行なわれた当時の買収農地の状況およびその後における右農地付近の発展の状況が判示のようなものである場合には、同法五条五号にいう近く土地使用の目的を変更することを相当とする農地であつたといえないことはないにしても、買収除外の指定をしなかつたことにつき重大かつ明白なかしがあつたとまで…