自作農創設特別措置法三条に基づく買収処分が行なわれた当時の買収農地の状況およびその後における右農地付近の発展の状況が判示のようなものである場合には、同法五条五号にいう近く土地使用の目的を変更することを相当とする農地であつたといえないことはないにしても、買収除外の指定をしなかつたことにつき重大かつ明白なかしがあつたとまではいうことはできず、右状況だけからして買収処分を無効とした判断には理由不備の違法がある。
自作農創設特別措置法五条五号の指定がされるべきであつたにかかわらず右指定を受けることなくしてされた買収処分を無効とした判断が理由不備であるとされた事例
自作農創設特別措置法3条,自作農創設特別措置法5条5号,行政事件訴訟法3条4項
判旨
行政処分の無効は、瑕疵が重大かつ明白であることを要するところ、農地買収処分において買収除外の指定をすべき事情があったとしても、直ちに瑕疵が明白であるとはいえない。
問題の所在(論点)
農地買収処分において、本来なされるべき買収除外の指定がなされなかったという瑕疵が、当該処分を当然無効とする「重大かつ明白」な瑕疵に該当するか。
規範
行政処分が当然無効といえるためには、当該処分に認められる瑕疵が、重大な法規違反であるのみならず、客観的に明白であることを要する。明白性とは、処分の成立過程や外形的な状況から、瑕疵の存在が誰の目にも明らかであることを指す。
重要事実
本件土地を含む一帯では土地区画整理事業が施行され、換地処分の認可もされていた。本件土地の東側地区では住宅建設が進み宅地化が進行していたが、西側に位置する本件土地の周辺は宅地化が遅れており、依然として水田として耕作され、登記簿上の地目も「田」のままであった。国は、本件土地が自作農創設特別措置法5条5号による「買収除外」に該当すべき土地であったにもかかわらず、その指定をせずに買収処分を行った。
事件番号: 昭和36(オ)1253 / 裁判年月日: 昭和38年3月1日 / 結論: 棄却
右誤認が原審認定の事情のもとで明白な瑕疵とはいえない以上、買収処分は違法であつても、無効ではない。
あてはめ
本件土地周辺では、東側では宅地化が進んでいたものの、本件土地が位置する西側周辺は買収当時も水田として利用されており、区画整理後の道路も農道として使用されるなど、外形的には農地としての実態を維持していた。このような状況下では、近い将来に土地使用目的が変更されることが相当であった(買収除外事由があった)としても、その事情が客観的に明白であったとは断定できない。したがって、買収除外の指定を欠いたとしても、その瑕疵が誰の目にも明らかなほど「明白」であったとはいえない。
結論
本件買収処分には重大かつ明白な瑕疵があるとはいえず、当然無効ではない。したがって、これを前提とした売渡処分も直ちに無効とはならない。
実務上の射程
行政処分の無効判断における「重大明白説」を再確認した事例。特に農地買収のような大量・反復的な処分において、認定に専門的判断を要する事実(買収除外事由の有無等)については、たとえ後に違法と判断される内容であっても、外形から直ちに判明しない限り「明白性」を否定する傾向にある。
事件番号: 昭和50(オ)782 / 裁判年月日: 昭和51年10月15日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法三〇条一項により買収する未墾地は開墾適地であることを要し、明らかに開墾不適地である未墾地を対象としてなされた買収処分には重大かつ明白な瑕疵がある。
事件番号: 昭和36(オ)1022 / 裁判年月日: 昭和37年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効とされるためには、その瑕疵が重大かつ明白であることを要する。農地でないことが客観的に明白な土地を農地と誤認してなされた買収処分は、その瑕疵が重大かつ明白であり、当然無効である。 第1 事案の概要:本件土地は、かつては耕作されていたが、地盤沈下や台風による堤防決壊の影響で海水が浸入…
事件番号: 昭和32(オ)883 / 裁判年月日: 昭和33年10月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効とされるためには、その瑕疵が重大かつ明白であることを要する。事実に反する無理な認定により法律上の要件を欠くことが明白な状況下で強行された農地買収処分は、重大かつ明白な瑕疵があり当然無効である。 第1 事案の概要:被上告人はa村に居住し、そこを生活の本拠としていることは村民周知の明…