自作農創設特別措置法による買収計画の公告および承認があつた後、買収令書の交付または交付に代わる公告が行なわれた事跡がなく、「買収の時期」より十余年も経過して後に、農地法施行法第二条第一項第一号の規定に依拠し、あらたに買収令書を交付して買収処分をすることは許されない。
「買収の時期」から十余年を経過した後にされた買収令書の交付による農地買収処分が無効とされた事例
自作農創設特別措置法(昭和21年法律第43号)6条,自作農創設特別措置法(昭和21年法律第43号)9条,農地法施行法2条1項1号
判旨
自作農創設特別措置法に基づく買収計画につき、農地法施行法2条1項1号の「従前の例」により買収処分を行うには、計画公告・承認後遅滞なく買収令書の交付等がなされる必要がある。買収時期から10余年経過後に初めて買収令書を交付してなされた買収処分は、特段の事情がない限り無効である。
問題の所在(論点)
農地法施行法2条1項1号の「従前の例により」買収できる期間的限界、および買収時期から10余年経過後になされた買収令書交付の有効性。
規範
農地法施行法2条1項1号に基づき、旧自作農創設特別措置法(以下「自創法」)の買収計画にかかる農地を「従前の例」により買収できるのは、①買収計画の公告・承認後「遅滞なく」買収令書を交付する場合、または②遅滞なくなされた交付等に瑕疵があったため後日これを補正する場合に限られる。農地改革の急速な実現という目的、および自創法による買収が農地法による場合よりも被買収者にとって不利益であることに鑑み、長期間経過後の新規交付は許されない。
重要事実
徳島市内の農地につき、昭和25年10月に自創法に基づく買収計画が樹立・承認された。知事は同年12月2日を「買収の時期」とする手続を進めたが、実際には買収令書の交付や公告を欠いていた。その後、本件訴訟が提起されるに至り、昭和39年6月23日(本来の買収時期から約13年半後)になって初めて、農地法施行法2条1項1号を根拠として買収令書を上告人に交付した。
事件番号: 昭和27(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、異議申立や出訴期間内に行われた争訟によって是正されない限り、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った際、真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を相手方として買収計画お…
あてはめ
本件では、昭和25年の買収計画承認後、法定の買収令書の交付または公告が行われた形跡がない。にもかかわらず、本来の「買収の時期」から10余年も経過した昭和39年になって、初めて新たに買収令書を交付して買収処分を行っている。これは、法の目的とする迅速な農地改革の要請に反し、かつ被買収者の不利益を不当に継続させるものであり、前記規範の①にも②にも該当しない。
結論
本件買収令書の交付およびこれに基づく買収処分は、農地法施行法2条1項1号の解釈に違背し、無効である。
実務上の射程
経過措置や旧法準用の規定がある場合でも、行政目的に照らした時間的制約(遅滞なき適正手続)が存在することを示した事例。特に、相手方に不利益な処分(剥奪的処分)において、法律が明示的に期間を定めずとも、信義則や法目的から手続の遅延が処分を無効に導き得るという構成の参考となる。
事件番号: 昭和30(オ)695 / 裁判年月日: 昭和31年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行する買収計画に違法がある場合、計画に対する不服申立期間経過後であっても、後行の買収処分の取消訴訟において計画の違法を主張できる。また、法令上の除外要件に客観的に該当する土地を対象とする買収は、行政庁による指定の有無にかかわらず違法となる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、行政庁…
事件番号: 昭和41(行ツ)49 / 裁判年月日: 昭和47年9月22日 / 結論: その他
共有にかかる牧野につき自作農創設特別措置法による買収計画の公告および承認があつたのち、一部の共有者に対して買収令書の交付または交付に代わる公告が行なわれた事跡がなく、「買収の時期」より七、八年も経過したときは、その後において、農地法施行法二条一項五号の規定に依拠し、右一部の共有者に対しあらたに買収令書を交付してその持分…
事件番号: 昭和26(オ)405 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第五条第四号による都道府県知事の指定がない以上、都市計画法第一二条第一項の土地区劃整理施行区域内の農地であつても、これを買収することができる。 二 原判決の確定するところによれば、本件買収計画に対する訴願の裁決書はおそくも昭和二三年一一月二〇日上告人に送付せられ、その後同二四年一月二九日に本件買…
事件番号: 昭和35(オ)1426 / 裁判年月日: 昭和37年9月7日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画後一〇年以上経過して行われた買収処分も必ずしも無効とはいえない。 二 農地買収を不法行為として損害賠償を請求するについての時効期間の起算日は賠償を請求し得べき事実を知つた日と解すべきである。