共有にかかる牧野につき自作農創設特別措置法による買収計画の公告および承認があつたのち、一部の共有者に対して買収令書の交付または交付に代わる公告が行なわれた事跡がなく、「買収の時期」より七、八年も経過したときは、その後において、農地法施行法二条一項五号の規定に依拠し、右一部の共有者に対しあらたに買収令書を交付してその持分の買収処分をすることは許されない。
「買収の時期」から七、八年を経過したのちにされた買収令書の交付による牧野持分の買収処分が無効とされた事例
自作農剤設特別措置法(昭和21年法律第43号)40条の4,自作農剤設特別措置法(昭和21年法律第43号)40条の5,自作農剤設特別措置法(昭和21年法律第43号)9条,農地法施行法2条1項5号
判旨
農地買収計画の公告・承認後、長期間経過してから行われた買収令書の交付による処分は、経過規定の趣旨を逸脱し無効である。また、共有地の買収処分は各共有者の持分に対する処分としての性質を有するため、一部の共有者に対する令書交付の欠如はその持分移転の効力に影響する。
問題の所在(論点)
農地買収計画の公告から長期間経過した後の買収令書交付による処分の有効性、および共有地に対する買収処分が各共有者に対して個別に効力を生じるか(処分の個別性)。
規範
自作農創設特別措置法に基づく買収処分における買収令書の交付(または農地法施行法2条1項5号による従前の例による買収)は、買収計画の公告・承認後遅滞なくなされるべきである。瑕疵の補正としてなされる場合を除き、買収の時期から相当期間(本件では7〜8年)が経過した後に、新たな買収令書の交付をもって買収処分を行うことは、経過規定の趣旨に反し許されない。また、共有地の買収は各共有者に対する持分の買収としての性格を有するため、手続の適法性は各共有者ごとに判断される。
重要事実
事件番号: 昭和42(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和43年6月13日 / 結論: 破棄自判
自作農創設特別措置法による買収計画の公告および承認があつた後、買収令書の交付または交付に代わる公告が行なわれた事跡がなく、「買収の時期」より十余年も経過して後に、農地法施行法第二条第一項第一号の規定に依拠し、あらたに買収令書を交付して買収処分をすることは許されない。
上告人ら3名の共有地につき、農地委員会が買収計画を樹立した。当局は、買収令書の宛名を「A3外2名」と記載し、昭和24年にA3に対してのみ交付した。他の共有者であるA1およびA2には交付されず、両名が受領を追認した事実もなかった。その後、本訴提起後の昭和30年および31年(買収時期から約7〜8年後)に至り、当局は農地法施行法に基づきA1・A2に対し改めて買収令書を郵送交付した。
あてはめ
本件では、A1およびA2に対して買収計画の公告・承認後遅滞なく令書が交付された形跡がない。買収の時期から7〜8年も経過した後に、農地法施行法の経過規定を根拠として新たに令書を交付することは、旧法下の未了手続を終了させるという経過規定の合理的な範囲を超えている。したがって、A1・A2に対する令書交付は無効である。また、共有地の買収は各人の持分に対する処分であるから、先行して適法に交付を受けたA3の持分については処分が有効となる一方、有効な交付がないA1・A2の持分については買収の効力は生じない。
結論
買収時期から長期間経過後になされたA1およびA2に対する買収令書の交付は無効であり、両名の持分についての買収処分も無効である(A3の持分に関する処分は有効)。
実務上の射程
行政処分の適法性が「適時の手続遵守」に依存することを示す。特に経過措置を利用した処分において、合理的期間を徒過した手続の補完が否定される点、および共有持分に対する行政処分の可分性を判断する際の指針となる。
事件番号: 昭和35(オ)1426 / 裁判年月日: 昭和37年9月7日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画後一〇年以上経過して行われた買収処分も必ずしも無効とはいえない。 二 農地買収を不法行為として損害賠償を請求するについての時効期間の起算日は賠償を請求し得べき事実を知つた日と解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)308 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、買収令書の交付が買収計画で定められた買収時期より遅れたとしても、直ちに買収処分が違法となるわけではない。当初の公告の瑕疵を補正する趣旨で後になされた令書交付は、買収計画の時期に遡って所有権移転の効力を生じさせる。 第1 事案の概要:不在地主である上告人…
事件番号: 昭和33(オ)302 / 裁判年月日: 昭和34年1月22日 / 結論: 棄却
一、村農業委員会がその樹立した牧野買収計画を取り消したことを県農業委員会において承認する旨の被買収者に対する通知は、行政処分にあたらない。 二、買収、売渡の目的とされた三五町歩の土地のうち約九町歩は採草地として買収適地であつたが、その余の部分は林地として買収不適格地であつたにかかわらず、目的地の全部が採草地にあたるとの…
事件番号: 昭和26(オ)405 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第五条第四号による都道府県知事の指定がない以上、都市計画法第一二条第一項の土地区劃整理施行区域内の農地であつても、これを買収することができる。 二 原判決の確定するところによれば、本件買収計画に対する訴願の裁決書はおそくも昭和二三年一一月二〇日上告人に送付せられ、その後同二四年一月二九日に本件買…